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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
巡航艦ツェルプスト艦長兼第1巡察部隊司令 (その2)
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で良い。少なくともヴァレンシュタインは手のかかる小僧じゃない。一緒にいても苦にならない上官だ。

「駆逐艦ラウエンより入電、レーダーに感有り」
さっき異常無しと報告があったばかりだが……。
「位相は」
「八一七宙域を九一三宙域に向かって移動中との事です」

俺がヴァレンシュタイン司令を見ると微かに頷き命令を出した。
「全艦に命令、直ちに宙域八一七に向かう。軽空母ファーレンに命令。ワルキューレを出し偵察行動をさせるように」
「はっ」

最近ではヴァレンシュタイン司令もスムーズに命令を出せるようになってきた。最初はどうして良いか分からず、俺が殆ど命令を出していたが。根が真面目なのだろう。一生懸命俺に教わっていたからな。健気なもんだ。

レーダーに反応したのは交易船だった。巡察部隊が臨検するのは軍艦だけではない。民間の交易船、輸送船も含まれる。とはいっても本来ならこちらは警察の管轄にあるものだ。軍が臨検するのは警察も民間も嫌がる。

例のサイオキシン麻薬事件以来、軍と内務省の警察権力を巡る争いは過熱する一方だ。今のところ軍が優位に立っているようだが、内務省も諦めてはいない、あきらめるはずも無い。今回の臨検でもさぞかし苦情が来るだろう。




「どういうことだ、何故積荷の確認が出来ない?」
「はっ、それが、船長が反対しているのです」
「こちらは公務だぞ、何を考えている」

駆逐艦ラウエンが民間の交易船パラウド号に積荷の臨検を通知したのは一時間ほど前の事だった。兵を派遣したのだが、船長が臨検に反対しているらしい。

公務なのだから押し切ればよいのだが、どういうわけか手間取っている。巡察部隊など精鋭の来る場所じゃない。その所為で手際が悪いのだろう。

そう思っていたが、どうやら事件らしい。何故公務の邪魔をするのか? 簡単だ、こちらに知られると拙い荷を積んでいるからだろう。サイオキシン麻薬だろうか。軍の輸送船では拙いと考え民間船を使用したか?

「ワーレン少佐、厄介ごとのようですね」
「そのようです。ヴァレンシュタイン司令」
穏やかな口調だった。表情にも笑みがある。

この若者は怒った口調や慌てた口調を周囲に見せた事が無い。表情も同じだ。いつも穏やかな笑みを浮かべている。よっぽど育ちがいいのか、胆力に溢れているのか俺には未だに判断できずにいる。

「此処にいても埒が明きませんね。現場に行ってみましょう」
「ご自身で行くのですか?」
「ええ、兵を二十名ほど用意してください」
そう言うとヴァレンシュタイン中佐は艦長席を立って歩き始めた。



本当なら艦長が外に出る以上副長の俺は艦に残るのが当然なのだが、彼は未だ若い。何処で失敗するか分からない、心配だからついていくことにした。彼もそれが分
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