第17話(改2.6)<巡回(鎮守府の外)>
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感のこもった呟きだ。
記者の青葉さんが興味本位でないことは分かるが、これは陸軍には機密事項。かつ負け戦の証拠だ。彼らも気分を害するだろう。
苦笑した青葉さんが答える。
「では脳内シャッターに刻んでおきます」
「うまいこと言うな」
「えへへ」
彼女は車を、ゆっくり前進させながらジックリ見ていた。
(逆に、こういった攻撃を受けながら耐え抜く艦娘たちも凄い)
改めて、そう思った。
「私たちも、よく逃げ延びたものだな」
私は寛代を見ながら呟いた。
彼女も無言で高射砲を見詰めていた。
(この子なりにも何か感じるものがあるのだろうか)
すると秘書艦が口を開いた。
「青葉さん、そろそろ」
「あ、ハイハイ。では、次に参りますぅ」
やや名残惜しそうにして青葉さんはアクセルを踏み込んだ。ドルンという太い音を響かせた軍用車は加速する。
作業している憲兵たちが再びこちらを見たが、やはり私たちへの関心は少ないようだ。
ただ逆に私は陸軍の反応に違和感を覚えた。これが都市部だと海軍に対し、あからさまに嫌がらせを受けたものだ。実際、中央でも陸軍と海軍は仲が悪かったりする。
だがここ山陰では、お互いにノンビリしている印象だ。
(これも地方だから?)
私は助手席の祥高さんに聞いた。
「ここでは陸軍と海軍が仲が悪いってことはないのか?」
「そうですね」
彼女は一瞬、不思議そうな顔をしたが直ぐ質問の意図を理解した。
「ここでは、さほど対立する雰囲気はありませんね」
「なるほど」
私は今日、陸軍に送って貰ったことを思い出した。
「そういえば今朝の憲兵さんも親切だったな」
私は頭の後ろに手をやって座席に深く腰をかけた。すると隣に座っている寛代が頷いている。彼女も彼のことは印象に残ったのだろう。
公園を離れた軍用車は路地を抜けて岸壁へ出た。そこには境水道に沿って一本の道路があった。
「へえ、ここは変わったなぁ」
思わず声を出した。
すると青葉さんが直ぐに反応する。
「司令、この辺りも、よくご存知なのですね?」
「あぁ、地元だからな。ただ、この岸壁に魚市場が有った気がするが」
すると彼女が説明する。
「えぇ。以前より漁獲量が減ってしまったとかで」
「へえ?」
「それで市場が無くなって新しく道路が出来ました」
「なるほど、よく知っているな」
私は感心した。
「えへへ。一応ぉ、記者ですから。地元のことは時々調べてます」
彼女は恥ずかしそうな顔をする。
「では、この道に沿って西へ向かいまぁす」
車は岸壁に沿って走り出す。
祥高さんが境水道(海峡)の対岸に見える山を指差しながら説明する。
「右の山……島根半島の頂上に
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