第16話(改2.7)<巡回(鎮守府内)>
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隠すように彼女は言った。
「Y沢議員……えっとぉ、本人か父君だったか忘れましたが、かなり尽力したらしいですね」
「Y沢」
ここで何故か秘書艦と寛代が反応した。
「確か地元選出の代議士だな」
私も思い出した。
再び青葉さんが切り返す。
「司令、ご存知ですか?」
「あぁ、余り芳しい噂は無いが地元の代議士だからな。意識はするさ」
「なるほどぉ」
何か言いかけた彼女を遮るように私は続けた。
「最初ここに着てビックリしたよ。計画は知っていたが現地は初めてだったから」
「あ、埋立地のことですね?」
彼女は明るく反応する。
「海が陸になってたら誰でも驚きますね」
「あぁ、このご時世に良くこんな大工事が出来たものだよ」
「ホンとは工場とか企業誘致したかったらしいです」
「だろうな」
青葉さんの口調が記者っぽくなってきた。そこは基礎情報として知ってるのだろう。
「今でも釣りは出来ますし鎮守府が誘致されたのも必然でしょうね」
「あ? そうかな」
私は彼女の言った『必然』という単語が妙に引っかかった。まさか鎮守府を誘致する為だけに埋め立てしたわけじゃないだろう。
青葉さんは言った。
「こんな広い土地……私たちが来なかったら宝の持ち腐れでしたね」
「そうだね」
確かに美保鎮守府が埋立地、全てを使っているわけじゃない。ほんの一部だ。だから、まだ大半の土地が更地のまま海風に曝されている。それは艦娘でも勿体ないと感じるのか。
「実際ここは他所の鎮守府と違って平坦地で艦娘にも使い易いんですよ」
その言葉に隣の寛代も、しきりに頷いていた。
「そうか?」
(これは実際に使っている艦娘らしい意見だな)
しばらく走ると松の防砂林が見える。そこを抜けると大きな幹線道路に出る。
私は言ってみた。
「これが滑走路へ転用出来たら便利だが」
「いやぁ蛇行しているからムリでしょう」
青葉さんは率直な意見を言う。
「松林もありますし」
さすが彼女は反応が早い。
「そうか。今朝みたいな攻撃があったら、どうかと思ったが」
「市内へ向かうと陸軍の滑走路もありますが、今回はどうだったか聞いてません」
そして青葉さんの突っ込み。
「司令、何かご意見が?」
「いや、今朝の攻撃が気になってね」
「そうですねぇ。確かに敵が地上を狙うのは珍しいです」
それを聞いて私は考えた。
(これだけ基地が密集していれば、地方の町でも敵は重要拠点と勘違いするのだろうか?)
いろいろ気になることは多い。私は頭の後ろに手を組んで座席に、もたれ掛かった。
ふと視線を感じて隣を見ると寛代が不思議そうに、こちらを見ていた。
思わず反応した。
「下
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