第四十三話 あえてその場所にその二
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「だから絶対に来て、それも速くね」
「急ぎます」
「それじゃあね」
龍馬にここまで言ってだ、電話を切ってだった。優子は鞄を持って呼んでいたタクシーに乗ってだった。八条駅に行って。
そこの博多行きの特急に乗った、今は新幹線に新神戸駅から乗るよりも八条病院に近い八条駅から行った方がいいと判断してだ。
そのうえで特急に乗った、乗っている間ずっとだった。緊張して目を閉じることも殆ど出来なかった。本を読むことも車窓からの景色を楽しむこともだ。
優花のことを考え出来るものではなかった、そしてだった。
長崎に着くとまたタクシーを拾った、現地に着いてもいてもたってもいられずにだ。
出来る限り全速力で療養所まで行ってもらった、そして療養所に着くとすぐに優花のところまで来て言った。
「お話は聞いたから」
「姉さんもう来たの」
「もうじゃないわ」
優子は自分の主観から答えた。
「遅かったとね」
「姉さんは思ってるの」
「そう、本当にやっとよ」
「来たって感じなの」
「ええ、それでだけれど」
「まだこれからだよ」
岡島が息を切らさんばかりの優子に言葉をかけた。
「本当にね」
「そうなの」
「うん、それにね」
「それに?」
「久しぶりに会ったんだけれど」
同期としてだ、岡島は優子にフレンドリーな笑顔で声をかけた。
「挨拶は」
「あっ、久し振りね」
「そうね、ただ」
「ただ?」
「正直君のことは申し訳ないけれど」
「忘れてたんだ」
「お話を聞いてからね」
優花の危機、それをだ。優花を見て言った。
「この子のことを」
「もうそれで頭が一杯で」
「そうだったわ」
「ああ、やっぱりね」
「悪いけれどね」
「僕がここにいることすら」
「完全に忘れていたわ」
またこう言ったのだった。
「君のことは」
「うん、けれど僕もね」
「優花のことになの」
「そうだよ、一緒に何とかしようとしてるから」
「そうなの」
「この療養所で知り合ってからね」
そうしているというのだ。
「何とかしようって心を砕いてるよ」
「そのこと今思い出したわ」
「そもそも蓮見さんをこの療養所に入れたのは君だったね」
「貴方もいるからね」
「僕を信頼してくれてだね」
「優花を入れたのよ」
そうしたということもだ、優子は話した。
「絶対に大丈夫だって思ってね」
「ちゃんと覚えてくれてるじゃない」
「覚えてるけれど」
それでもとだ、優子は正直に述べた。
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