第14話(改2.6)<司令の思い出と艦娘たち>
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「ああ。だが実はもう一人、同じようなことを考えていた奴がいたんだ。彼は『H2』と呼んでおこう」
「『H2』?」
この記号めいた単語に再び手帳を取り出しかけた青葉さん。グッと堪える姿が微笑ましい。
「口数が少ない大人しいタイプだよ。彼とは喧嘩するほどでもなかったが微妙にウマが合わなかった。今、思えば私と似ていたのかもな」
「居る居る、そういうカタチ!」
島風は何度も頷いている。
「カタチ」とは聞き慣れないが彼女には思い当たる節でも、あるのか?
「で?」
二本指で唇を挟むような格好をしながら青葉さんが促して来る。
「それはぁ、反りが合わなかったのでしょうか?」
「彼は」
私は記憶を手繰った。
「計算づくで動く感じってのかナ。例えば艦娘は単なる兵器と割りきるような奴だ」
『……』
二人とも急に黙る。場が少し暗くなったようだ。私は少し焦った。
「もちろん、そうじゃない者もいる……私も違うから安心しろ」
この言葉に安堵した二人。
私は続ける。
「指揮官も千差万別だ。良心の欠片もない奴だって居る。そんな連中が、いわゆる『ブラック鎮守府』を生むんだ」
「しっつもーん!」
長いウサギの耳を揺らしながら島風が手を上げる。
「ねぇブラックって何?」
これも『辞書』には無い単語か?
気のせいか、周りの艦娘たちも聞耳を立ててるようだ。
すると知恵袋みたいに青葉さんが応えた。
「それは、この世の地獄みたいな所ってとこかナ」
呟くように言いながら寂しそうな表情をする。私は『おやっ』と思った。
(彼女も過去に何かあったのだろうか?)
ちょっと返す言葉に詰まった。
「ま、軍隊の指揮官なんて精神破綻する者も居る。私だって危ないかもな」
訳の分からない誤魔化しになった。
彼女たちと、そんなやり取りをしていたら祥高さんが戻ってきた。彼女は『失礼しました』と言いつつ青葉さんの向かい側に着席した。
「司令は、こちらの地方ご出身と伺いましたが」
祥高さんはテーブルに増えた二人の艦娘をチラ見しながらメモ帳を取り出して確認する。
「そうだね」
これは私。
「……」
青葉さんは黙ってモゴモゴと反復するような表情をしている。
祥高さんはチラチラと島風や青葉さんの顔を見ながら言った。
「では、この辺りの地理や気候風土、町の様子など、ある程度は、ご存知なのでしょうか?」
「最近の様子は分からないが気候風土は経験的に分かっているつもりだ」
私は、ちょっと姿勢を崩して続けた。
「着任前に軍から受けた鎮守府の資料は着任までにザッと目は通したけどね。今朝の砲撃のゴタゴタで全部、灰になったよ」
すると祥高さんは軽く頷いた。
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