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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
彼はNO.1
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うんだな。ちょっと羨ましい。いけない今はヴァレンシュタインよ。
「ええ、あんなのおかしいです。ウチに来る子じゃありませんよ」
「でも、うちに来るのよね」
困ったように先輩が答える。そう、ウチに来る……。
「なんかの間違いじゃないんですか」
「うーん、でもハインツに聞いたんだけど、四年間兵站を専攻したらしいわ」
「はあ」
ハインツというのは人事部に居る恋人の名前だ、ハインツ・ブリューマー。私もそんな風に名前で呼べる彼が欲しい……。ハインツの言う事が本当なら、彼は筋金入りの兵站希望者という事になるけど……。
結局食事が終わるまで私たちはヴァレンシュタイン候補生の事を話し続けた。
ランチの味はよくわからなかった。私の頭を占めていたのはあの坊やの事だった。
食事を終えて部屋に戻ると、兵站統括部第三局はヴァレンシュタイン候補生のことで持ち切りだった。
“凄い” 同感。
“カワイイ” それも判る、あの子はカワイイ。
“食べちゃいたい” それも判るけど、食べちゃ駄目!
兵站統括部の女性下士官たちは彼に夢中だった。
二週間経った。彼の人気は全然衰えなかった。むしろヒートアップする一方だった。
理由は一つ。彼を誘惑する雌狐どもが現れたのだ。軍務省の官房局、法務局の女性下士官たちが彼に希望配属先を変えさせようとしたのだ。薄汚い奴め!
「帝文」に合格しながら兵站統括部と言うのは何かの間違いではないかと何度も上司を通して彼を説得したらしい。でも、正邪を見分ける清い心を持ったエーリッヒ・ヴァレンシュタインは微塵も揺るがなかった。
“兵站統括部が駄目なら任官しない”とまで言って雌狐どもを拒絶してくれた。その話が兵站統括部に届いたとき、私たちは思わず泣いて喜んだ。なんてカワイイんだろう。見掛けだけじゃない、心までカワイイ。
そして、待ちに待った新任少尉配属の日、ヴァレンシュタイン少尉が配属されたのは兵站統括部第三局第一課、私達のところだった。ディーケン少将に連れられて来たヴァレンシュタイン少尉は柔らかく温かみを帯びた声で少し恥ずかしそうに挨拶をした。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタイン少尉です。本日付で兵站統括部第三局第一課への配属を命じられました。よろしくお願いします」
そう、待っていたのよ。少尉。私たちはみんな貴方を待っていた。彼を拍手で迎えながら私はそう思った。
三ヵ月後、帝都内の小さなカフェで恒例のNO.1を決める集会が有った。私も参加した。当然だけどNO.1はヴァレンシュタイン少尉だった。仕事も出来るし、性格もいい、弁護士資格も持っているし、官僚にもなれる。それに何と言っても笑顔が素敵。
はにかんだ顔も優しく微笑む顔も私たちを癒してくれる。甘党でココアが大好きなのも全部素敵。
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