第6章 VS感情
20 そして、本当の友人を確かめる
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いと思うわ。
だから、元気だして?」
そう言って夕日をバックに笑う夾竹桃の顔は、二度と忘れることはないだろう。それほどまでに美しく、俺の心にぐっと突き刺さった。下唇を噛んで、顔の皮膚に力を込める。
先ほどまで漏れ出しかけていた感情が漏れ始めた。
「じゃあ、俺と、まだ、友人として、接してくれるのか?」
「そうね。原稿の手伝いをさせてあげるくらいはしてあげる、他は・・あなたがお金を払うなら考えてあげてもいいわ」
俺にも
まだ
友人が、いる。
それだけで、冷たくなっていた心に温かさが戻ってくるように感じる。
喉元にぐっと何か沸き立つような、息がしにくくなるほどに嬉しかった。
次々と漏れ出す感情に身体が耐えきれなくなっていた。目頭が熱くなり顔の皮膚が小刻みに揺れる。
「ほら、分かったらちゃんと歩いて。私1人であなたの体重は支えきれないから」
「・・ぐす・・ああ、分かった」
「なに?泣いてるの?」
「ば、バッカ!泣いてねえよ!」
俺はイカれた左足の方を夾竹桃に任せ、もう片方の足で自力で歩くことにした。人は、信頼できる友人がいるだけで、こうも変わるのかと始めて感じた。
信頼できる友人。その言葉が今の俺には本当に嬉しかった。失ったと思っていたものがまだ残ってくれたこの感情。胸の内が暖かくなるのを感じた。
「ありがとな、夾竹桃。あと、悪かった。お前までこんなに傷を負わせて」
夾竹桃のセーラ服もかなりボロボロになっていた。ところどころ切り傷が見える。俺のために、夾竹桃は身体を張ってくれたんだということが、とても嬉しかった。
「別にいいわよ、これくらい。『イ・ウー』のときはもっと酷い怪我もしてたから。気にしなくていいわ」
そう言ってくれる夾竹桃の優しさに、俺は心が暖かくなった。こんなにもいい友人がいるだろうか。俺は本当に幸運なやつだろう。
そして、俺たちは武偵高校に到着した。裏から入ったため他の生徒にはまだ気づかれていない。まだ時間的にアドシアードの片付けの最中だろう。このまま隠れて行けば誰にも会わずに男子寮に帰ることができる。
こんな姿、誰にも見せるわけにはいかないからな。病院まではここから少し距離がある。
都会の中を通らなければならないし、まずは自室で応急手当をするつもりだ。
夾竹桃の手を借りて俺たちは少しずつ進んでいく。
「でもね、岡崎」
進みながら突然夾竹桃が話し始めた。
「岡崎自身が解決しても、まだダメ。やるべきことが残ってる」
「やるべき、こと?」
俺は夾竹桃の言いたい意味が理解できずに、ただ首を傾げた。
「でもそれは、私が言える立場じゃないの。私
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