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霊群の杜
目々連
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全国レベルの八幡神社と片田舎の玉群神社じゃ競争にもならんだろうが。
「でっでもうち普通のサラリーマン家庭で…神社とかじゃなくて…」
「いちいち真に受けるな。話が進まない」
どうも歯切れが悪い。奉はこの女子が少し苦手なようだ。





「…見られている、気がするんです」
静流さんは、少しずつ語り始めた。
「それはとても厭な気配で、それに一人じゃなくて…とても大勢のような」
「今の俺たちみたいな状況か」
あの後、俺たちを取り囲む物見高い視線は、増える一方だった。彼女も俺たちの噂話にひかれて来た。だが彼女は真摯な悩みを抱えて、人見知りを圧して話しかけて来たように思える。
「厭な気配…ねぇ」
顎をひねるように指を動かしながら、奉がにやりと笑った。
「あんたが、『それ』を厭だと感じた理由は?」
静流さんは、はっとしたように唇に指をあてた。
「どうして…かな。とにかく厭だな、としか」
「ふん…いつもってわけじゃ、なさそうだな」
どうして分かるのか、と言いたげにパッと目を見開く静流さんを奉が首を傾げて覗き込む。静流さんは頬を染めて顔を反らしてしまった。
「それよ」
奉は口の端を吊り上げて笑う。
「凝視に耐えられない手合いの女だ、あんたは。…そっちの匕首使いと同じでな」
「うるせえよ」
セクハラじゃねぇか。
「避け得ない、特定の場所を通る度に視線を感じる。…違うか」
静流さんは少し視線を彷徨わせ、やがて小さく頷いた。奉は食い終わったB定食の盆を片手に、すっと立ち上がった。
「…眼鏡の枠を受け取りに行く。あんたも来るといい」




眼鏡屋への道すがら、静流さんはぽつりと語ってくれた。

彼女の家は、この大学からバスで8駅の場所にある。本当は自転車で行きたいけれど、自転車が下手なので(この辺りで『この子はひょっとしてとてもドン臭い子なのでは』と思い始める)毎日バスで大学に通い、バスがある時間の範囲でアルバイトをこなしているという。
そのバスは小さな川にかかる橋を通る。こんな大きなバスが通っても大丈夫かなぁ…と不安になるような小さな橋だという。


ここ数日、その橋を通る度に、厭な視線を感じるようになった、という。


「それも、バスに乗っているときだけ」
そう云って彼女は肩をすくめた。
「自転車通学にしようかなって思ったんだけど、私やっぱり自転車へたで、何度もおばあさんを轢きかけて」
奉が、眉を上げて呟いた。
「同じ婆さんじゃあるまいねぇ」
「…その、私、運転遅くて…」
「徒歩の婆さんより!?」
「すみません…」
なんかすごい逸材が現れたねぇ…と呟きながら、奉が俺の斜め後ろに寄って来た。
「…婆さんが異様に速かったのかもしれないだろ…」
…俺も一連の会話を聞きながら、な
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