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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第二話 傷ついた者達の日常
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夕立。この際はっきりさせておくけど、私はあなた達を許したわけじゃないから」
「………はい………」
「でも勘違いしないで。あなた達はもう防空姉と時雨と同じ『家族』よ。だから、私はあなた達をずっと護り続けるから」
「!…あ…ありがとう……ございます………!」

凰香の言葉を聞いた夕立は、涙を流す。
今までこのような言葉を言ってくれたのは、ずっと自分の面倒を見てきてくれた榛名だけだ。それ以外の艦娘は誰も言ってくれず、提督や憲兵に至っては自分を『兵器』扱いしていた。
だが凰香は家族や友人の仇であるはずの夕立達を助けてくれたどころか、『家族』と言ってくれた。その言葉は傷つき、疲弊しきっていた夕立の心を癒してくれた。
すると不意に凰香が立ち上がり、夕立に近づいてくる。そして夕立を優しく抱きしめてくれた。夕立の肌に凰香の肌が直接触れ、凰香の温かさが伝わってくる。
夕立は耐えきることができずに、凰香の身体に顔を埋めて嗚咽を漏らし始める。そんな夕立を凰香は何も言わずに抱きしめながら右腕で頭を撫でてくれた。

(……夕立も、これからは絶対に凰香さん達を護る……ぽい!)

夕立は嗚咽を漏らしながらそう思う。それは夕立が初めて抱いた『決意』だった。


………
……



「……今日は疲れましたね」

星々が光り輝く夜、入浴を終え襦袢に着替えた榛名は自室へと向かっていた。
榛名は今日一日防空棲姫や時雨から多くのことを教えてもらった。料理の作り方や掃除の方法、さらには海にいる魚を捕まえる仕掛けの設置や回収、畑の野菜の世話など多くのことを教えてもらった。
どれも艦娘にとっては無関係のものだが、榛名にとってはどれも新鮮で改めて『自分は生きている』ということを実感した。
夕立も今日一日は旧泊地を探検しており、その表情はあの鎮守府にいた時よりも明るく、生き生きとしていた。
そんな初めての一日が終わり明日のために寝ようと自室に戻っている途中、榛名の目に屋上へと繋がる階段が入った。

(……うーん、ちょっと熱を冷ましてから部屋に戻りましょうか)

榛名はそう思うと、屋上へと繋がる階段を上った。そして扉を開き、屋上へと出た。

「……あら、誰かと思えば榛名じゃない」

榛名が屋上に出ると、先にいたであろう実体化した防空棲姫がフェンスにもたれながらタバコを吸っていた。

「あ、防空棲姫さん。タバコをお吸いなんですか?」
「ええ、寝る前に一服ね」

防空棲姫がそう言ってタバコを吸い、上を向いて紫煙を吐き出した。その防空棲姫の姿に、榛名は見惚れてしまう。
すると榛名の視線に気づいたのか、防空棲姫がタバコの箱を差し出してきた。

「あなたも一服す
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