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艦隊これくしょん 災厄に魅入られし少女
第二話 傷ついた者達の日常
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が良かった。
すると夕立の頭を洗っていた凰香の手が離れ、また頭にシャワーが当たり始める。

「……もういいわよ」

しばらくするとシャワーが止まり、凰香がそう言ってくる。夕立は頭を振るって水滴を飛ばすと、ゆっくりと目を開いた。
先ほどまで夕立の頭を洗っていた凰香はすでに風呂に入っていた。
夕立は風呂に近づくと、おそるおそる風呂に入っていく。

「はぁぁぁぁぁ……」

全身がお湯に浸かると、夕立はあまりの気持ち良さに声を漏らしてしまった。すると、凰香が夕立に言った。

「気持ち良い?」
「はい、とても」

凰香の問いに夕立は頷く。今まではただ傷を治すためだけに入渠し、入渠が終わればすぐに出撃し、また入渠するという繰り返し続けていた。そのため、夕立は風呂に入ることが気持ち良いということを知らなかった。そもそも夕立達は元提督に『兵器』として扱われていたため、風呂に入るという行為自体を知らなかった。
だが、こうして今夕立は風呂に入ることが気持ち良いということを知った。そのため、夕立は改めて『自分は生きている』と実感していた。
すると、凰香が言った。

「そう、良かった。好きなだけゆっくりしていくといいわ」
「はい!」

凰香の言葉に夕立は頷く。そしてしばらく露天風呂を楽しんでいたが、不意に凰香の右腕に視線が向く。
可愛らしい少女に全く似つかわしくない、禍々しい深海棲艦の右腕。にもかかわらず、凰香はそのことを全く気にしている様子はなかった。なぜ右腕をあのような籠手で覆っているのかはわからないが。

「……この腕が気になるのね?」

夕立が凰香の右腕を見つめていると、凰香が右腕をお湯から出してそう言ってくる。夕立は意を決めて凰香に聞いた。

「……あの、凰香さんは良かったんですか?その腕になって……」
「そこまで気にしてないかな。私の意志で選んだわけじゃないから後悔のしようがないし、この腕は防空姉が私を助けてくれた証拠だから。………強いて言うなら、この腕は力が強すぎてね。この腕になったばかりの頃はよくいろんなものを壊していたわ。今は制御できるけどね」
「……触ってみてもいいですか?」
「いくらでもどうぞ」

そう言って、凰香が右腕を差し出してくる。夕立は両手でそっと凰香の右腕に触れた。感触は腕の方は夕立とほとんど変わらず柔らかく、鉤爪は固かった。

「感触はどう?」
「えっと、夕立達とほとんど変わらないです………ぽい」

凰香の問いに夕立はそう答えながら凰香の右腕から手を離す。夕立の手が離れると、凰香の右腕は風呂の中へと沈んでいった。
しばらく二人の間に沈黙が流れるが、不意に凰香が言った。

「………
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