第12話(改2.7)<傷んだ制服とつむじ風>
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ほうが良いんじゃないかな?」
「……」
私の言葉に鳳翔さんは、ちょっと苦笑して祥高さんを見た。
秘書艦は静かに口を開いた。
「そうですね。でも僅かとはいえ司令と戦場を共にした制服です。処分されるとしても敬意を持って、お洗濯は、されたほうが宜しいかと存じます」
「あ、そうか」
思わず苦笑した。なぜか彼女の言葉は重い。
「では、宜しいですか?」
その言葉に私は頷いた。
祥高さんは鳳翔さんに目配せをする。彼女も「失礼します」と会釈をして控え室に入ると衣紋掛けから制服を外して丁寧に抱えて出てきた。
改めて見る制服は酷く汚れていた。彼女に抱えさせるのは申し訳ない気持ちになった。
「済まないね、汚くて」
だが鳳翔さんは微笑んだ。
「いえ、この制服も戦士です。艦娘たちと同じですから誇らしいですわ」
「……」
その言葉に顔が火照る思いだった。艦娘たちは意外に、しっかりしている。規模が小さいからと甘く見てはいけない。
「では失礼します」
鳳翔さんは軽く礼をして退出した。
少し気恥ずかしくなった私は取り繕うように祥高さんに言った。
「新しい制服って軍からホイホイ支給されたかな?」
「ホイホイ?」
彼女は怪訝そうな顔をした。
「あ」
私は察した。
「すんなりと……って言う意味だよ」
「それなら、分かります」
変な言葉を使うものではない。
私はデスクの引き出しを確認しながら言った。
「あの制服だって今回辞令を受けて貰っただけだから、2着目があるのかどうかよく分からないけど」
「……」
聞いているのだろうけど彼女は自分のデスクで黙って書類の整理をしている。
私は頬杖をつきながら言った。
「軍の支給品って基本的には期間空けないと、くれないよな」
そのとき祥高さんは「そうですね」と言った。
「この戦時下ですから軍備品とはいえ配給になると思われます」
(ああ一応、私の話は聞いているんだな)
ホッとした。彼女には中央の役人の雰囲気がある。
「やれやれ、軍服ならともかく司令官の正装を着任早々、敵にグチャグチャにされたのも私くらいだろうなあ」
頭をかいた。
「でも」
彼女は、こちらを見て口を開く。
「やはり、それは誇らしいことです」
私はまた慌てた。この祥高は本当に単なる艦娘なのだろうか?
(発想が普通の艦娘とは違うんだよな)
やはり指揮官代理を務めると意識が違ってくるのだろうか?
そこで私は彼女に合わせるように言い直した。
「戦闘に巻き込まれたから仕方ないとはいえ詰め襟も面倒だ。しばらく作業服で執務するかな?」
すると彼女は微笑んで言った。
「まるで、どこかの独裁国家の指導者みたいですよ」
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