第10話(改2.5)<美保の艦娘たち>
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見た。つかず離れずといった絶妙な距離感。
そのとき、ひらめいた。
ひょっとしたら、この重巡『祥高』は、その能力の高さゆえに、こんな辺境の地に追いやられているのだろうか?
(軍隊という閉鎖した組織ではよくある話だが)
……同期の出世を妬んだり、イジメの仕返しで背後から撃つと言うウソみったいな話は、表にならないだけで意外に多くある。
(特に陸軍は酷いらしい)
まして相手が艦娘となれば、よけい煙たがる人間は少なくない。
(秘書艦のように自然に「間」が取れる艦娘は、かなり高スキルだと思うが)
時折、その秘書艦の視線を感じながら私は妙に長い「間」を持ったことを誤魔化すように彼女に言った。
「あの駆逐艦『寛代』は私を迎えに来ていたようだが」
「……はい」
私はイスに深く腰をかけると頭の後ろに手を廻した。
「米子駅では結局30分くらい待っても出会わなかったぞ」
それを聞いた祥高さんは困ったような顔をした。
「申し訳ありません提督。実はあの子、よく乗り過ごすのです。今日も安来の方まで行ってしまって慌てて引き返していました」
「それで、たまたま同じ列車に乗り合わせたのか?」
私は笑った。
「やれやれ……無線が付いていなかったら果たしてどこまで行ってたことやら」
呟きながら再びメモ帳を開いくと早速、書き付けた。
『寛代』:通信特化。性格は、そそっかしい……と。
そんな私を見た祥高さんは言う。
「提督、何度も伺うのですが……お怪我の方は?」
私は軽く手を振った。
「大丈夫だ。いきなり地上戦に巻き込まれたんだから仕方がないよ」
そして提案する。
「個人的に私のことは提督より『司令』が良いんだが。まぁ強制はしないが」
「畏まりました。主な子たちには呼称の共有します」
ホッとした私はメモ帳を閉じた。どうも提督ってのは落ち着かない。まして、この美保鎮守府の規模では、なおさらだ。
そこで思い出して、付け加えた。
「しかし急だったからな……手持ちのカバンくらいしか持ち出せなかったよ」
壁際にある黒ずんだ鞄を見詰めて言った。
「着替えや他の書類は、さっきの空襲で、ほとんど焼けてしまった」
「え!」
いきなり彼女は叫んだ。今度は、こっちがびっくりした。
「それでは、すぐにお着替えと関連書類を手配します!」
「あ……そう」
いきなり素早い反応だな。
祥高さんが内線で連絡を取ってから直ぐに『鳳翔』(ほうしょう)さんという軽空母の艦娘が挨拶に来た。彼女は、とても落ち着いた雰囲気の艦娘だった。
「まるで……お母さんだな」
思わず呟くと彼女は静かに微笑む。
「いえ、そんな……祥高さんより若いんですよ」
「え?」
そりゃ、
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