第8話(改2.5)<美保鎮守府>
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ていた。私はホッとした。
「さて」
改めて鎮守府の建物を見上げた。ここは二階建ての小さな庁舎だ。
「本当に、こじんまりとしているなぁ」
舞鶴など他の鎮守府に比べると美保は、ふた周りほど小さい印象だ。大型重機も見えない。さすがに倉庫や工廠はありそうだが。
普通の鎮守府なら敷地が広く門も厳重で大抵は守衛が居る。もちろん舞鶴は入り組んだ地形だから鎮守府そのものは思ったほど平坦でもないが。
ところが、ここは艦娘だけとは聞いているが少し拍子抜けする。
私は寛代に言った。
「出迎えもないな」
「……」
「別に嫌味じゃないぞ」
「……」
(この子も相変わらずだな)
普通の少女なら私も怪訝に思っただろうが、この子の態度は妙に自然に感じた。
私は問いかけた。
「まあ良い、お前が案内してくれ」
「……うん」
ようやく私の言葉に反応してくれた。そこで早速、正面玄関から本館に入った。
「ホウ」
思わずため息が出た。ロビーは明るい吹き抜け。規模は小さくとも建物自体には海軍の品格を感じる。
ここの設計も海軍本省がきちんと管理したに違いない。そう思った瞬間、私は自分に言い聞かせるように呟いた。
「ここも海軍だな」
寛淑から特に反応はない。
視線を移すと奥の通路に数人の少女たちが見えた。
「艦娘か」
もちろん珍しくはない。だが、この状況では少々緊張する。彼女たちはヒソヒソ話をしている。
さらに向こう側には偉そうに腕組みをして見ている艦娘も居る。
(これが艦娘部隊だよな)
この光景だけ見れば、どこの女学校かと錯覚する。他の鎮守府と違い独特な雰囲気に満ちていた。
ここは帝国海軍の鎮守府だが改めて、この場に立つと受ける違和感が大きい。
(雰囲気に飲まれてはダメだ)
私は無視して廊下を進んだ。寛代も無言で私の斜め後ろから付いて来る。
「執務室は上かな?」
振り返ると彼女は頷く。
(確か初代の提督は女性だったな)
資料にあった内容。恐らく先任の提督たちは途中で参ったのだろう。
(果たして私は?)
敢えて強気で歩くのだが、どうしても不安が湧く。
そう思っていたら寛代が私の腕を引っ張る。
「あ?」
「……」
彼女は無言で2階へ上がる階段を示していた。
「ついうっかり階段を通り過ぎるところだった」
私は頭に手を当てて照れ隠しした。なるほど建物が小さいから階段も狭い。荷物を持ち直すと彼女に促されるまま2階へと上がった。
そこで私は思わず立ち止まった。急に視界が開けた。
「おぉ」
1階では分からなかった、2階の窓からは鎮守府を囲むように蒼い海と緑色の島根半島がよく見える。それらが夏の陽射しを受け鮮やか
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