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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(2)
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んし」
「……」

「お二方が欠席と分かればパーティも参加者は今ひとつでしょう」
「ベルゲングリューン、気が変わった。出席するぞ」
「はあ」

「夫たるもの妻が美しく装う機会を無駄にするべきではない。それに折角の親睦パーティが盛り上がりにかけるのは良い事ではないだろう。俺とエーリカは出席する。そう伝えてくれ。それと悪いが俺はこれからエーリカと出かける。後を頼む」
「はっ」

三十分後、俺とエーリカは地上車の中にいた。
「何処へ行くのです」
「下着を買った店だ」

「また下着を買うのですか、もう十分です、必要有りません」
そう呆れた顔をするな、我が妻よ。
「お前、イブニングドレスを持っているか?」
「いいえ、持っていません」

やはりそうか。この女は自分を装うという事を知らない、いや出来ない。幼少時に両親を亡くした所為かもしれない。どんな女でも持っている美しく装うという事が出来ないのだ。そして美しく装う事を酷く恥ずかしがる。結婚式を断ったのもそれが原因だ。あの時は不思議だったが今なら分かる。

虚飾を嫌うのだ。仕事でもこの女は大言壮語などした事は無い。何よりも実を重んじる。おかげで女としての技量、炊事、洗濯、掃除を全部完璧にこなすにも関わらず、自分の容姿には無頓着という酷くアンバランスな女になっている。

「二十五日に財界が主催の親睦パーティが有る。それに出席するのでな、お前のドレスを調達する」
「でも下着の店と」
「そこは女性専門の衣類を扱う店なのだ。下着もあればドレスもある、装身具もな。まあ有名なのは下着のようだが」

「貴方は軍服なのでしょう。私も軍服で十分です」
「そうはいかん。新領土の統治を上手く行かせるには財界の協力が必要だ。お前には美しく装って彼らの好意をかち取ってもらわなければ成らん。これは公務なのだ」

公務、その言葉にお天気女は悔しそうに唇を噛んだ。まだまだこれからだ。
「怒っているのですね先日の事を。悪かったと謝ったでは有りませんか。まさかあんな騒ぎになるとは思っていなかったのです」

「そうではない、これは公務なのだ。それに妻を美しく装いたい、美しい妻を他人に自慢したいと思うのは夫として当然の事だろう」
「契約結婚でもですか」

「契約結婚だからこそだ。俺達は仲の良い夫婦だと周囲に認めさせなければならん。そうだろう?」
幸いな事に運転席と後部座席は防音ガラスで仕切られている。俺達の会話が運転者に聞かれる事は無い。

エーリカは恨めしそうに俺を見た。
「そんな顔をするな。もう直ぐ店に着く。夫に服を買ってもらうのだ、嬉しそうにするのだぞ。俺達は着せ替え人形ごっこをするくらい仲の良い夫婦なのだからな。これも契約の一部だ」

店に入るとオーナー自ら挨拶に来た。五
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