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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(1)
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赤らめた。どうやら新総督は毎日夫人の下着を確認するらしい。着せ替え人形ごっこでもやっているのかもしれない。夫人は小声で“夫は困ったチャンなのです”と恥ずかしそうに話してくれた〜

「……」
「けしからん記事です。厳重に注意しましょう。それとフラウ・ロイエンタールにも注意しなければ。悪気は無いのでしょうが、閣下の威信に、ひいては帝国の威信に関わります」

「いや、その必要は無い」
「閣下?」
「この記事の通りだ。ベルゲングリューン、俺は困ったチャンなのだ」
「はあ?」

ベルゲングリューン、そんな呆れた顔をするな。この俺が、オスカー・フォン・ロイエンタールがこの記事を打ち消して廻るなどそんなみっともない真似が出来るか? 否! 打ち消した所で誰も信じまい。返って見苦しいだけだ。俺はそんな無様さには耐えられんのだ。

「俺は別に犯罪を犯しているわけではない。他の女ならともかく自分の妻で着せ替え人形ごっこをやっても何の問題も無い、そうではないか?」
「はあ、それはそうですが……」
ベルゲングリューンは眼を白黒させて驚いている。

「ベルゲングリューン、このハイネセンは下着の種類が豊富だ。卿も試してみるのだな」
「……試すのでありますか?」
何処と無く困惑したような髭面がおかしかった。少しからかってやるか。

「あのヒョウ柄だが、あれは良いな。ジャングルの中でしなやかな雌豹でも捕まえたような気分になる。自分が自由奔放になったような気がするのだ」
「……自由奔放」
ベルゲングリューン、お前何を考えた。エーリカの事か?

「紐も良いぞ。脱がせる必要が無いからな、紐をはずせばいいだけだ」
「……なるほど、奥が深いのですな」
「そうだ、馬鹿には出来ん。たかが下着、されど下着だ」

ベルゲングリューンはしきりに頷いている。周りを見ればゾンネンフェルスは腕を組み、シュラー、レッケンドルフは何処か呆然としている。なんとなく優越感が俺の胸に満ちた。こいつらも困ったチャンになればよいのだ。

それにしてもやってくれるではないか、我が妻よ。これで俺は自他共に認める困ったチャンだ。おそらく三日もすれば新領土だけではない、帝国本土にまで伝わっているだろう。もう誰も俺をロイエンタールとは呼ぶまい、困ったチャンだ。どうなるかは想像がつく。

“新領土から報告が来ぬ。困ったチャンは何をやっているのだ”
“陛下、落ち着いてください。困ったチャンは着せ替え人形ごっこで忙しいのです”
“ええい、なんということだ”
“よろしいでは有りませんか、陛下。困ったチャンが着せ替え人形ごっこで忙しいなら、宇宙は平和です”

“どういう意味だ、カイザーリン”
“困ったチャンがやっと夢中になるものが出来たのです。反乱が起きる心配はなくなりました
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