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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
困ったチャン騒動記(1)
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然不満は無いぞ」
「……」
嬉しそうに言うな、阿呆。だからお前は浮気一つまともに出来んのだ。お前がその気になればいくらでも自由になるものを。俺は溜息を吐く事も出来なかった。
お天気女に二万隻もの艦隊を与えた理由は大体想像がつく。多分俺が反乱を起そうとしてもお天気女が二万隻を持っていれば抑えてくれると思っているのだろう。馬鹿め、あの女が反乱を起すとは考えないのか。あの女がその気になったら新領土軍五万五千隻が一糸乱れず反乱を支持するだろう。俺が反対しても無視されるに違いない。
結婚式をどうするのだという話があったが有難い事にお天気女は全く関心を示さなかった。そんなことよりも新領土に行って仕事をしましょうと言ってくれた。おかげで俺は今こうしてトリスタンにいられる。有難い話だ
新帝国暦 2年 6月18日 オスカー・フォン・ロイエンタール、新領土総督に着任。
俺とお天気女は総督府の中で暮らしている。下手に家など借りると警備が大変だ。総督府への行き帰り、さらに留守中の家の管理など警備に負担をかけることになる。俺たち以外にもベルゲングリューンなどの上級将校達は総督府内に住居を持っている。
「どうですか、今日の出来は?」
「うむ、美味しい」
「そうですか、良かった」
俺が褒めているのは夕食の事だ。これは決してお世辞ではない。一緒に暮らし始めて二週間経つがお天気女、いや妻が作る料理は実に美味い。ケーキ作りが上手いのは知っていたが、普通に料理も上手いのだ。断言するが、フラウ・ミッターマイヤーにも負ける事は無い。肥らないように気をつけねばならん。
俺が褒めた事で安心したのだろう。お天気女も一口食べて納得したようだ。美味しそうに食べ始める。今日の夕食はメインにグラシュとシュペツレ添えとサラダ、スープがコールラビのクリームスープ、デザートがピーチ入りクアークだ。それに赤ワインが添えられている。
俺はこの女と食事をするのが嫌いではない、いやむしろ楽しんでいる。なんと言ってもこの女との食事は飽きる事が無い。他の女だと話題はファッションか食事、後は噂話が精々だが、この女なら政治、軍事、経済、料理なんでもござれだ。
それにこの女との会話は絶対に必要なのだ。俺は基本的には新領土の統治をしているが、お天気女は新領土の治安維持を担当している。新領土でも彼女の力量に負う所は大きい。行政と治安維持の責任者の意見交換の場、その一つがこの食事だった。正直これだけ頼りになる部下はいない。よくぞ結婚したものだ。
たった一つこの食事で不満があるとすれば彼女が酒を飲めないことだろう。それだけは物足りなく思っている。最も酔わせてどうするのだという話もある。まあ飲んだくれのアル中女よりはましだ。ほかは炊事、洗濯、掃除、仕事、全部完璧にこなす。
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