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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第15話『勇気ある誓いと共に〜流星達の決意』
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期の頃、表向きの理由として『ライトメリッツとアルサスに交易路を結び、ライトメリッツの経済発展に貢献する』旨を、エレンが伝えている。しかし、リムが言いたいことはそこではない。そこを踏まえて、リムは言葉を再開する。

「……今一度、戦う理由を自分自身で問いて頂きたいのです。今のあなた方に命令するものはなく、あなた方自身が、何のために……何をすべきか、私も含めて、それらを自分で判断せねばならないのです」

リムはきっぱりとした口調で言った。
随分と手前勝手な言い分だと、自分でも思う。部下の未来を、生を、死を、それらを預かって命令する立場の指揮官からすれば、明らかな『逃げ』だと――

「……よって、これを機に『銀の流星軍』を離脱しようと思う者は、今より速やかにライトメリッツへ帰還してください」

リムにまったく自分たちを引き留める意志がないと知り、兵達は再びざわめく。戦姫不在での帰還による混乱は避けられない。
戦姫を助ける為に、このまま銀の流星軍に残るのもよし。持てる武器と意志を捨てて、ライトメリッツに戻るのもよし。戦うべき兵士にこのような選択を強いる自分は、エレンから見たらどのように映るだろうか?
命令でなく理由。はじめて味わう戦う意思の正念場。本当の意味で問われる、手に取る剣と槍、身にまとう甲冑の意味を。兵達の戸惑いは大きい。
ルーリックは不安げな顔で、彼等を見守っている。時折ルーリックが気まずそうにリムの横顔を見やる。彼女もその不安を隠しきれていないようだ。
彼等は自分で考えなければならない。蜂巣砲(ガトリングガン)という大量殺戮の兵器に対し、考えず、命令に従うだけならば、肉壁にすらならない無意味な死を遂げてしまう。一度はその恐怖を持ってしまった彼等だから、結論までの道のりは近いはずだ。
死にに行くようなものだ……騎士団は動かねぇのか?戦姫様でさえどうにもできなかったのに、俺達じゃどうしようもない……そんな声が細々と聞こえる。ここまでは想定通り。重要なのはここからだ。
最後にリムはしみじみと兵達の顔を見回したその時だ。遠くから一人のブリューヌ兵が寄ってきて、ジスタート兵の後ろから声を上げた。

「――俺は副官様に従う」

その声に、全員が目を見開いた。この集まりに関係のないブリューヌが一体何の用だ?

「あんたたちの戦姫様が、今まで俺達を導いて助けてくれたのは事実だ」

ザイアン率いるテナルディエ軍によるアルサス焦土作戦。
ロラン率いるナヴァール騎士団による叛逆者ティグル討伐戦。
クレイシュ率いるムオジネル軍によるブリューヌ南部攻略戦。
想像を絶する激戦を潜り抜けることが出来たのは、隣人たるジスタートのおかげだと彼は訴える。
エレンが兵を貸してくれなかったら、アルサスは文字通り焦土と化しているに違いなかった
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