第15話『勇気ある誓いと共に〜流星達の決意』
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『数年前・ジスタート・レグニーツァ公国・公宮執務室』
「黒船?」
耳慣れぬ響きに、アレクサンドラ=アルシャーヴィンはその単語をつぶやいた。
これは、まだ彼女が『血の病』で床に伏せる前のやりとりである。
「……黒船」
「はい、戦姫様。世界を作り替える……常識を転覆させる存在……という意味が込められています」
「最初にその姿を目撃したのは戦姫様の何世代か前です。幾度となくレグニーツァに、その姿をちらつかせていました」
彼女の公務室に集まった臣下一同は、みな熱を帯びた危機感を以てうなずいた。
「あの時……海賊との戦いは一段落を迎えた直後でした。文字通り『黒という闇を丹念に塗りつぶした船』が我が国へ来航し、『我々は文明の孤児』という事実を、あの船はレグニーツァに、いや、この大陸に突きつけたのです」
戦姫になったばかりの彼女は、海上の治安に政力を注いでいた。理由は定期的にリプナとプシェプスの起点施設に寄り、向こうの世界からもたらされる情報を収集する為だった。『利益』の形式はどうであれ、諸国実情を知ることは非常に重要なのだから。
建前はともかく、本心は何より『探求心』に近い動機があったからだ。サーシャは青い水平線から運ばれる『概念』を見るのが好きだった。長年仕えている文官や武官から、特に航海の多経験を持つマトヴェイからの『この手の話』を聞くのが楽しくて仕方がない。その時に彼女の瞳が一段と輝くあたり、それこそ彼女の本心であることがうかがえる。向こう側の話を聞くときの心境は、まるで宝箱を開ける前の瞬間に似ていた。
――しかし、『この手の話』も、決していい話だけではない。悪い話もあり得るのだった。――
定期外の報告により、マトウェイが突如として公宮へ訪れた。そして悪い話をしているという、今に至る。それが黒船に関わる話題だった。
「帆を必要としない……湯気で動く……鉄板を敷き詰めた船……」
そんなものが本当に実在するのか?アレクサンドラ――サーシャは冷静を装いながらも、眉を潜める。
帆を必要とせず、蒸気と呼ばれる『動力』で動き、風に左右されず自由自在に進船可能なものは、船乗りにとって理想のゆりかごといっても過言ではない。おそらく、ジスタートやザクスタン、いや、大陸中を捜してもないだろう。まさに『新世界』からの贈り物だ。
今の我々では到底達しえない技術力。木造船にどれだけ改造を加えても、後天的に付加した文明力程度では、決して黒船の潜在力に及ばない。生まれた大陸が違うだけで、既に決定づけられた『力の壁』なのだろう。
「もし、風無しで自在に動く船が『本当に』あるとしたら、是非とも手にいれたいものですな」
「マドウェイらしいね」
サーシャはくすりと微笑んだ。彼
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