その2
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「自分を好きになれるようにしてくれたことかな」
長くなるよ、と言ったが、永瀬さんは恋バナ恋バナと興味津々のご様子。
まあ面白くもない話だけど、興味があるのなら、話そうか。
「当時、中学2年の頃かな。僕は自分の事が嫌いだったんだよね」
僕は何をやっても凡庸だった。勉強を頑張っても順位は2桁に入れず、部活を頑張っても県大会なんて夢のまた夢。
かといって他に何かやりたい事がある訳でもないし、あっても努力したところで結果は出ないだろう。
何もできない自分が、何にも価値がないように思えて、生きる意味が分からなかった。
そんな時、あの子に会ったんだ。
「あの子は、太陽みたいな人だった。暖かくて、優しくて、生きることを全力で楽しんでたんだ。一緒にいるとすごく楽しくてねぇ」
うーむ、思い返すとこの時点ですでに好きになってた気がするが、気づいてなかったから仕方ない。
ひたすら前をみるあの子に、憧れてた。
僕に笑顔を見せてくれて、嬉しかった。
たまに外で遊んだ時とかめっちゃ舞い上がってたなあ。
でもだけど。だからこそ。
僕なんかが、彼女と一緒に良いのかなと思ってしまったんだ。
「憧れは嫉妬の裏返し。僕はあの子の全てが羨ましくて、嫉妬して。あの子と比べて、僕は惨めで、ちっぽけで。こんな事を考えてしまう自分がますます嫌いになったよ」
劣等感に苛まれながらも、僕は彼女と離れられずにいた。
ぐだぐだ悩んで、あの子といるのが辛くなってきていた。そして、それを彼女は分かってたんだね。
ある日、嫌なら会わなくても良いよって、言われてしまったんだ。
あの時は頭が真っ白になったなあ。必死に否定して、気付いたら思ってた事全部ぶちまけてしまってた。
我に返ったあと、なんでこんな事をしちゃったんだと自己嫌悪している僕。
俯いて聞いていたあの子は、いろいろ言いたい事はあるけど、とりあえず、と拳を握って。
渾身のボディーブローを繰り出した。
「いやもう、あれは死ぬかと……」
人生最大の危機だったかもしれん。
思考がまるで追いつかずに腹を抑えて咳き込む僕を、彼女は胸ぐらを掴みあげて目を合わせた。
めっちゃ怒ってた。
「人ってこんなに怒ることができるんだと初めて知ったね」
今でもたまに夢にでる。マジ怖かった。
僕はビクビクしてきょどるしかなかった。
そんな僕に、あの子はありったけの怒気を叩きつけて言ったんだ。
『あなたを馬鹿にする人は、あなたであっても許さない』
『私にとってあなたは、誰よりも大切な友達なの』
『あなたしかいないの。あなたじゃないと嫌なの。だから、価値がないなんていわないで
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