第七話「龍、天下る」
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?」
「まぁ……いいや」
「それよりも、あの時の約束覚えてる?」
「約束?」
「そう! 私が大きくなったときの約束よ?」
――あんまし、大きくはないようにみえるけど……
「で? 覚えてる?」
「あ……えっと、何だっけ?」
「も〜! 酢豚よ! 酢豚!?」
「酢豚?」
一夏はキョトンとした。
「そう! 私が『強く、大きく』なったら酢豚を作って食べさせてあげるって約束よ?」
「ごめん、俺って酢豚よりチンジャーオロース派」
「酢豚よ! 酢豚!! 断然酢豚なんだからね!?」
「わ、わかったって……で、凰?」
「……?」
ここいらで、一夏は真剣な目をして凰と向き合った。
「何よ?」
「……その、サイ・サイシーのことで聞いたぞ?」
「ああ……あいつがなんて言ってたの?」
「……凰、強くなりたい気持ちは俺にもあるしわからなくもない。だからといって、少林寺で修行していた身で、ISを選んじゃダメだって」
「アンタが、『男』だからなの?」
凰は、一夏からもそのようなことを言ってくることで、表情を曇らせた。しかし、一夏は優しくできるだけ彼女の機嫌を損なわないように優しく言った。
「そうじゃないよ? 拳法なんかの武術は力に溺れないってのが基本だろ?」
「言っとくけど、ISは兵器じゃないわ! 列記とした『武術』の一環よ?」
「じゃ、じゃあ……どうしてISにミサイルやビーム兵器が搭載されてるんだよ? 武術にそんなものあるのか?」
「少なくとも、私の甲龍は武術が主流よ!」
「だからって……」
「所詮、時代遅れなのよ……拳法なんて」
「!?」
凰の一言で、先ほどまでの一夏の目が丸くなった。
「国技や武術が文化にせよ、いずれは『力』こそが文化になって栄えていくのよ……私が、中国へ帰った時の状況もそうだった……」
中国では、常に貧富の差が絶えず続いていた。ある者は塔の天守閣から下界を見下ろし、またあるものはドブまみれになりながら塔を見上げるといった激しい格差社会だ。そして、何もかもが「力」のある者によって征服された社会でもあった。
凰は、そんな真っただ中の中国へ帰国したのだ。
離婚した母親と二人暮らしで食堂を営んでいたが、経営が破綻してしまい、母と共に店をたたんで実家へ帰った。そこで続いたひもじさにしびれを切らした彼女は、いつか社会に通用する『力』を得るため、少林寺の門を叩いたのである。
少林寺での修行も野望に突き動かされた彼女は次々に上位の修行へと昇っていく。しかし、そんな彼女の耳元に届いた『IS』という存在が港を騒がせたとき、彼女はそれに強い関心を持った。そして、政府の容認が適材者を収集させるために少林寺を訪れ、凰が抜擢されたのである。そのとき、彼女は次なる力を悟り『IS』への道を歩んでいった……
「愛とか正義とかなんて
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