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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
完璧 イチゴタルト
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「逆だよ、ワーレン提督。ビッテンフェルト提督に好意を持たず、彼の失敗を望む者だ」

失敗を望む者、その言葉が会議室を暗くした。
「俺の失敗を望む者か……。心当たりがないな」
トサカ頭のその言葉に皆が笑い出した。全くこいつは極楽トンボとでも言うべきか、こいつだからお天気女の上官も務まるのだろう。俺には到底無理だ。

「卿は気楽でいいな、ローエングラム元帥府に居るのだぞ、門閥貴族達に憎まれてもおかしくはあるまい?」
「確かにそうだが、それならキルヒアイス少将も同じだろう。わざわざ俺と言うのが分からん。そうではないかワーレン提督」

なるほど、確かにそうだ、トサカ頭の言うことに一理ある。最近のトサカ頭は妙に鋭い所がある。ただの馬鹿ではないらしい、まあ正規艦隊の司令官なのだ、馬鹿では困る……。結局俺達は結論の出ないまま会議室を後にした。

真相が分かったのはその日の夕刻だった。
「原因は小官でした」
辛そうな表情で告げたのはお天気女だった。

「どういうことだ中佐」
トサカ頭の問いにお天気女は辛そうな表情のまま答えた。
「元帥府が開かれた直後でしたが、ある貴族から、その、愛人になれと……」

「誰だ、その馬鹿は?」
「フレーゲル男爵です、ロイエンタール提督」
フレーゲル、やはりあいつは馬鹿だ、こいつを愛人? 気でも狂ったか?

「それを断ったのだな」
「はい」
「今回の件はその腹いせか」
トサカ頭の問いにお天気女は黙って頷いた。

「中佐、今回の反乱鎮圧、失敗は出来んぞ」
「はい」
「失敗すればフレーゲル男爵を喜ばせるだけだ。必ず成功させなければならん」

確かにトサカ頭の言う通りだ。負ける事は出来ん。負ければ門閥貴族達が嘲笑うだけだろう。だが問題はアルテミスの首飾りだ。どう対処するか……。

「首飾りは対処可能です。損害ゼロで落とせます」
「!」
俺の疑問に答えるかのようにお天気女がトサカ頭に答えた。顔にいつもの笑みは無かった、強い視線でトサカ頭を見ている。トサカ頭は軽く頷くとお天気女の肩を叩いた。
「そうか、では早速鎮圧に行くとするか」



帝国暦 487年 4月27日   オーディン ローエングラム元帥府 アウグスト・ザムエル・ワーレン


これからビッテンフェルトのカストロプ攻略戦が始まる。会議室にはその様子を見ようと大勢の人間が集まっている。ローエングラム元帥府の指揮官が始めて実戦を行なう。それだけではない、あの首飾りをどうやって落とすのか……。

ヴァレンシュタイン中佐は損害無しで落とせると豪語したらしい。それだけではない、イチゴタルトを作るよりも容易いと言ったともいう。そのためこの作戦はイチゴタルトと命名された。命名者はビッテンフェルトだ。

本当に
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