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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十七話 眠れない夜を抱いて
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もお料理が上手なんですのよ。」
穏やかな声がした。振り向いた紀伊と讃岐は愕然となった。近江が赤城に匹敵するくらい料理の山の乗った皿を手に捧げている。
「うはぁ!!それ、全部食べるんですか?近江姉様。」
讃岐が目を見開いた。
「全部?ええもちろんですわ。」
不思議そうな顔をして答える近江にまた皆が笑った。それを遠くから眺めていた榛名が、
「こうして4姉妹で席を囲めるのも、いいですよね。」
金剛型4姉妹はそろってテーブルについて、料理を囲んでいたのだ。
「おおおお姉様、そんなにお食べになっては、のどにつまります!!ってほら!!」
やきもきしながら見ていた比叡が、金剛が胸をたたき出したのを見て、慌てて背中を叩く。
「ああもう!!これじゃまた鎮守府さくら祭りの二の舞ですよ!!」
霧島も榛名も加勢し、金剛はようやく息が付けるようになった。
「ふ〜〜〜危なかったデ〜ス!!もう少しでヴァルハラに行けるところだったデス。」
「本当に『デス』になるところでしたよ、もう少し自重してください。お姉様。」
霧島がたしなめた。
「わかってマ〜ス。あぁ、でもあれもおいしそう!!榛名、行くデ〜ス!!」
あ、ちょっとお姉様!!と手を引っ張られながら榛名が叫ぶ。それを見て霧島も比叡も続いた。
 そこかしこで、皆が皆、楽しいひと時を過ごしていた。その光景を鎮守府秘書官室から長門が見ていた。
「行かないの?」
後ろで陸奥が尋ねる。
「後から行くさ。だが、こうやって皆の騒いでいる姿を見ているのもいいものだ。」
「楽しまないと、本当の楽しさは味わえないわよ。」
「あ、おい!!」
陸奥に押し出されるようにして、長門が秘書官室を出ていく。


16:00 出撃まであと14時間――。
 尾張は一人、オレンジ色に染まった波打ち際を一人歩いていた。しゃんと背を伸ばし、俯くことなく、ひたすらに前を向いて尾張は歩いていく。彼女の青い瞳は何を考えているかわからない。普段と同じ表情だったし、出撃前の不安や高揚は全く感じられなかった。ふと、尾張の足が止まる。目の前には折から吹き出してきた夕凪に髪をなびかせながら佇んでいる紀伊の姿があったからだ。
「こんなところで、何をしているの?」
尾張に声をかけられて、紀伊ははっと振り向いた。そしてばつの悪そうな顔つきになった。
「不安だったから、夕日を見て気を紛らわそうとしていたのよ。」
あまりにもストレートな表現に尾張は思わずえっと声を上げていた。
「私だって人間だもの。機械じゃないもの。あなたみたいに不屈の闘志と精神を持っていればよかったのだけれど・・・・。」
「それ、私が機械みたいだって言ってんの!?」
尾張の剣幕にびっくりしたのか、紀伊が慌てて謝った。それがふとおかしくて尾張は思わずふっと声を漏らしてしまっ
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