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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
オスカー・フォン・ロイエンタールの誓い
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「小官には望みが有ります。宇宙最強の艦隊を作り上げ、正規艦隊司令官になることです。小官は平民です。宇宙最強の艦隊を作り上げる事は出来ても正規艦隊司令官になるのは難しいでしょう。閣下とともに戦い、それを目指したいと思います」

宇宙最強の艦隊? 正規艦隊司令官? やっぱりこいつは鳥頭だ。臆面も無く言ってのけた。
「なる程。確かに卿が正規艦隊司令官になるのは難しいだろう。私を宇宙艦隊司令長官に押し上げ、正規艦隊司令官を目指すか。しかしそう上手くいくかどうか」

ミューゼル大将の声は何処か楽しげだ。面白がっているのかもしれない。
「上手く行かせなければなりません」
答えたのはお天気女だった。

「閣下は既にブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯を敵に回したのです。生き残るためには軍で誰からも害されないだけの実力をつけるしかありません。そうではありませんか?」
「……」

「皇帝陛下は必ずしも健康ではありません。もし陛下が亡くなるような事があれば、
貴族達は陛下の死にグリューネワルト伯爵夫人が関わっていると言い出すでしょう」
「馬鹿な、姉上がそんなことをするはずが無い」

思わずミューゼル大将が激昂した。しかしお天気女は取り合うことなく話を続けた。
「それを口実に閣下を処断します。立ち止まる事は許されません。閣下は陛下が亡くなる前に軍において確固たる地位を築き上げねばならない。今の閣下は極めて不安定な立場にあるのです」

ミューゼル大将に先程までの余裕は無い。いや、キルヒアイス、ミッターマイヤーも顔を強張らせている。俺も強張っているだろう。予想以上に俺達は危険な状態にあるようだ。落ち着いているのはトサカ頭とお天気女だ。いやお天気女は笑みすら浮かべている。

「閣下、まさかとは思いますが、その覚悟も無しにミッターマイヤー少将を助けようとしているのではないでしょうね」
お天気女が露骨にミューゼル大将を挑発した。幾分か顎を逸らし、胸を突き出すようにしている。そして眼には蔑みの色がある。女が良くやる挑発のポーズだ。

「そんな事は無い!」
「ならば確固たる地位を築くためにもこの裁判には勝たなければなりません。勝って下級貴族、平民出身の士官たちの信頼を勝ち取らねばならないのです。ここから全てが始まります」

ここから全てが始まる、その言葉にミューゼル大将が大きく頷いた。
「……確かにそうだ。私は負ける事は出来ない。良いだろう、二人の力を私に貸してもらおう。先ずはミッターマイヤーを助けてくれ」
「はっ」


帝国暦 486年 5月16日   オーディン 軍務省 尚書室  ラインハルト・フォン・ミューゼル


「何の用かな、ミューゼル大将」
「はっ。ミッターマイヤー少将の弁護人が決まりましたので軍務尚書閣下
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