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異伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(ヴァレンシュタイン伝)
オスカー・フォン・ロイエンタールの誓い
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…」
ミッターマイヤーの言葉にミューゼル大将、キルヒアイス中佐が頷き俺の方を見た。彼らの不安は分かる。弁護を頼んでも彼女が貴族側に有利な弁護をしては意味が無い。

「信じても良いのではないかと思います。彼女はヴァレンシュタイン弁護士の娘です」
「ヴァレンシュタイン弁護士の娘? ……あのヴァレンシュタイン弁護士の娘なのか?」

ミッターマイヤーの驚いた声にミューゼル大将、キルヒアイス中佐が物問いたげな表情をした。どうやら知らないらしい。未だ二人とも若い、無理も無いか。

「昔、リメス男爵という貴族が居ました。ヴァレンシュタイン少佐の父、コンラート・ヴァレンシュタインはリメス男爵家の顧問弁護士をしていたのですが、男爵家の相続問題で貴族達に殺されたのです」

俺はあの事件について知っている事を話した。ヴァレンシュタイン少佐の両親が、ヴァルデック男爵家、コルヴィッツ子爵家、ハイルマン子爵家のどれかに殺されたらしい事、ヴァレンシュタイン弁護士がいなければ、リメス男爵は謀殺され、リメス男爵家の財産は親族たちで奪い合いになったであろう事……。

そしてこの事件の所為で弁護士達は貴族達の恨みを買う事をひどく恐れるようになった。ミッターマイヤーの弁護を引き受けようとしないのもこの事件の所為なのだ。その被害者の娘がミッターマイヤーを弁護しようとしている。因縁としか言いようが無い。

「では彼女は門閥貴族達を憎んでいる、そういうことか。卿が信じられると言ったのはそれが理由だな」
「はい。能力はともかく心は信頼してもよいでしょう。後は実際にあって本人を確認するべきだと思います」

一番良いのは能力も心も信頼できる弁護士なのだ。それなのに俺たちに用意できたのは心は信頼できるが能力は信頼できない、どこか頭の壊れたお天気女だ。これから先門閥貴族と戦うのには余りにも貧弱すぎる武器だった。

一時間後、トサカ頭とお天気女がやってきた。お天気女は思ったよりも小柄だが、スタイルの良い女だった。それに笑顔の綺麗な女でミューゼル大将が“感じが良い”と言ったのも分からないではない。まともな女なら付き合っても良い、そう思わせる女だ。挨拶も早々に話が始まった。

「ビッテンフェルト少将、ヴァレンシュタイン少佐を紹介してくれたこと、感謝する。しかし良いのかな、ブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、帝国の二大実力者を敵に回すことになるが?」

「構いません」
「何故かな。私もロイエンタール少将、ミッターマイヤー少将も卿からそこまで好意を示される理由が無い。教えて欲しいものだ」

俺が素直にトサカ頭の提案を受け入れられなかった理由の一つがそれだ。トサカ頭が何故自ら危険を犯そうとするのか、それが良く分からない。お天気女はともかくトサカ頭には注意が必要だ。


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