40事件後
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の遊びが見付かってしまえば、人間ではない一弥が何をされるか分からないと知っていた。
「誰ですかっ?」
答えは無かったが、部屋の外を誰かが去って行く気配がした。それは祐一の存在に気付いた、母親の指示による物だった。
「奥様、やはりお嬢様は、お一人ではないようです。私どもが近所のお子さんを病院に運んでから、何かあったはずなのですが」
「そうですか、それでは、『思い出せるだけ、思い出しなさい』」
妖狐の一族である佐祐理の母の命令。舞のような天性の才能は無かったが、妖狐の血が濃い倉田家の力は、秋子の命令を少しだけ解除できた。
「あ、あの日は… お嬢様に助けを求めた子供を連れて森まで行ったのですが、森に入るとその子は消えて、大きな木の傍にその子と、あの御方が… それから、別の子が病院と言うと、て、転移、う、うわああっ!」
『もう結構です。それは悪い夢、思い出す必要はありません』
「は、はい…… はー、はー、はー」
運転手の狼狽の具合からも、妖狐関連の事件なのは容易に分かった。それも水瀬家本家の、秋子が関わった事件だと。
(まさか、佐祐理は丘の狐様を呼んでしまったの?)
幸運と災厄は表裏一体。ほんの紙一重の差で、倉田家にも破滅がやって来る。佐祐理の母は、慎重に今後の策を考えた。
「佐祐理、まだ起きてるの? 入りますよ」
母親が部屋に入ると、佐祐理はベッドに入って震えていた。まるで拾って来た子犬か猫でも隠すように、何かを抱きかかえて。
「いいのよ、怯えなくても、出てらっしゃい」
怯えているのは母親の方も同じだった。これが祐一のように子狐を拾っただけなら、丁寧に洗って寄生虫の卵を取り、予防接種でも受ければ問題無い。
寿命まで飼って、大切に育てれば災厄は起こらない。まだ母親は希望的観測を捨てきれなかった。
「本当… ですか?」
「ええ、佐祐理は誰を連れて来たのかしら? お友達、それとも…」
「では、電気を消して下さい。かず… いえ、この子は明るい場所はだめなんです」
母はとても悪い予感がした、明るい場所で生きて行けない化け物、もしくは伝承に残った使い魔。佐祐理は既に災厄に取り付かれていた。
「明かりを消せばいいの? でも、暴れたりしない」
「はい」
その言葉を信じ、母は照明を切った。やがて佐祐理はゴソゴソとベッドを出て、その「何か」に毛布を被せたまま起き上がった。
「さあ、出てらっしゃい」
『うん、お姉ちゃん』
「か、一弥っ!」
母から見ても、その幻のような姿は一弥だった。すでに記憶と霊が呼び出され、体が作られれば一弥になるはずの物だった。
「違うっ、この子は一弥じゃないっ、一弥なんかじゃないっ」
その影の中に、祐一も見てしまった母は錯乱して否定してしまった。それが災厄を呼ぶのも忘れ、自分の大
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