暁 〜小説投稿サイト〜
KANON 終わらない悪夢
40事件後
[11/15]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
切な子供の偽者を見て泣き叫んだ。
「何をおっしゃるんです? この子は一弥なんですっ」
 思っていた通り、このままでは一弥は自分から引き剥がされて捨てられてしまう。母の取り乱し方を見て、佐祐理は祐一の影を抱いて、必死になって庇っていた。
「違うのよ佐祐理っ、それは使い魔。誰か力ある者が放った自分の影」
 そこまで言って、妖狐の一族で話題になっていた、水瀬家の純血の妖狐を思い出した母。それならば先日の事件も、水瀬家の秋子の介入も説明がつく。
「まさか、貴方は水瀬、いえ、相沢様」
『そうだったかも知れない、でも今は一弥、これからもずっと一弥』
 自分がそうしなければ、生きて行けそうも無い少女の心を感じ、先日の謝礼と共に今後も一弥として佐祐理を支えて行こうと決めた祐一の分身。
「ちっ、違いますっ、一弥は私の息子っ、私がお腹を痛めて産んだ子供ですっ! もし貴方のように大きな力を持っていればっ」
 自分と同じように、力だけ持って生まれてしまった息子。祐一とは違い、あっと言う間に力を使い切って死んでしまった一弥を思い、冷静さを失って祐一の肩を掴んで泣き叫ぶ母。
「一弥を返してっ! 私の子供を返してっ!」
 もし冷静なら、秋子の所へ行って佐祐理との浅からぬ因縁を説明し、祐一を婿に迎える確約を取るか、血を受け入れる約束をして、倉田の家のためになる行動を取るはずだった。
 しかし母は、自分の息子の命を奪った呪われた血を憎んでいた。時に器にそぐわない大きな力を持たせてしまう、妖狐の血を呪っていた。
「やめてっ! お母様っ!」
 そこで母は、佐祐理を叩いて跳ね除けてしまった。目の前の魔物がどんな力を持っているのかも忘れて。
『お姉ちゃんに何をするっ!』
 まだ子供の祐一が出した数分の一の力とは言え、舞の魔物よりは強力だった。
 その力はベッドを砕き、窓を吹き飛ばして巨大化して行く。この時点で一弥の意思は消え、佐祐理の祐一にとって、唯一無二の少女に手をかけた者に制裁を加えようとしていた
「ひいいっ!」
『キエロ』
「やめてっ、一弥っ! あなたのお母様なのよっ!」
 目の前に出て母を庇う佐祐理を見て、何とか腕の動きを止めた祐一。
『お姉ちゃん』
「いいのっ、大丈夫だから… 落ち着いて」
 ここで、本体から離れているにも関わらず、大きな力を使った祐一の影は消耗してしまった。祐一自身は既に実家に帰り、力の源は無くなったと言うのに。
「また歌ってあげるから、ね?」
『うん…』
 母は、普段自分が出す使い魔より、遥かに大きな力を持った魔物に襲われそうになったが、それは佐祐理の言う事になら服従している。
 そこで相沢祐一とは、佐祐理と「心も魂も呼び合う」相手ではないかと思った。伝承にあるように、自分の祖先がそうであったように。
「奥様っ、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ