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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#52
FAREWELL CAUSATION?〜Silver&Crystal Rond〜
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仔狐《こぎつね》――!』



永暦(とこよみ)樹麓妃(じゅれいき)様……』




 数千年の悠久(とき)を越えて、交わる言葉。




(ほう)? やはり(わらわ)は、其方(そのほう)の主上で在ったと見ゆる』



 幾千を越える魔眼が樹幹の至る所に浮かび上がり、
桜麗の九尾を眇めた。



()れば無粋な従属共々、(ひざまづ)無沙汰(ふさた)を乞わぬかえ?
想い尽さば先刻の非礼、不尽(ふじん)にしてやらぬでもない』





 王と真王、名は似ていてもその存在には桁違いの開きが在る。
 ティアマトーがまだ生まれたばかりの頃、
既に此の王は紅世の象徴処か『司柱』として、
世界そのものの「局」として君臨していたのだ。
 以前のティアマトーならば、是非も無く膝を折りその「威」に屈していただろう。
 しかしこの御方が紅世より消えたその日から、
永き時の渡りの中辿り着いた今の自分、は――
『できませぬ』
『ぬ?』
『我が子の前で、卑を晒す “母” が何処におりましょう?」
 どんなに苦しくても、気高さだけは失ってはならない。
 嘗て己が子を生かすため、焼け爛れた手に糧を受け続け与え続けた者、
その疵が死に至るその時まで――
 現実がどれだけ残酷で在ろうとも、運命がどれだけ理不尽で在ろうとも、
子を想う母親とはそういう存在(モノ)
快楽(けらく)、快楽。妾の樹根(あし)に纏わり微睡んでいた仔狐も、
いつのまにか親狐になっていたという事か。
時の流れとは(たえ)なるモノ。
今 生(こんじょう)に執心は無いと申すか?』
貴公(あなた)様に刃を向けし慮外(りょがい)
(ひとえ)に私の不義で御座いますれば、
伏して御詫び申し上げ致しましょう。
しかし矮小なる仔狐にも、命を賭して庇護するものが在るので御座いまする』
 通常というより(これ)ほどに喋れたのかと、
普段の彼女の寡黙さを知るなら驚嘆すべき光景。
 それほどまでに【真王】の圧威が絶大だったとも云える。
 断頭に架けられた仔狐、その表顕そのままに。
()かろう。(ちこ)()やれ」
 その言葉だけで、首を刎ねられるのが解っているにも関わらず
侍りそうになる誘引力。 
『貴女の仔狐が生んだ “子” で御座います。
御照覧あれ』
 瞬間、契 約 者(ヴィルヘルミナ)の手が眼前を薙いだ。
 途端に解れ、桜色の糸と為る晶玉の髪飾り。
 神器ペルソナ、其の名称そのままに白面の妖狐(きつね)と成りて
淑女の風貌を覆っていく。
 対して真王は盤石の構え、変貌の僅かの瞬間、
仮面諸共に斬り刻むのは可能であっ
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