第三章
[8]前話
「これはよくないですね」
「気持ちだけ受け取ってな」
それでというのだった。
「子猫達は分けるか」
「そうしましょう」
こう言ってだった。
弓永は布を持って来た、そして。
母猫にかけて子猫達は別の場所にやろうとした、だが。
子猫達はどうしても離れようとしない、母猫の傍から。離しても離しても母猫のところに行こうとするのだ。
それを見てだ、緒形は弓永に言った。
「もうこれはな」
「仕方ないですね」
「一緒にいさせてやるしかな」
「そうですね、前から仲のいい母子達ですけれど」
「母親が風邪をひいたから」
「心配で離れたくないんでしょう」
こう緒形に話した、猫達を見ながら。
「多分ですけれど」
「そうか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「もうここは」
「一緒にいさせてやるか」
「風邪が感染るか心配ですが」
それでもというのだ。
「ここまで慕ってますから」
「だからだな」
「一緒にいさせてやります」
「それがいいな」
こうしてだった、弓永は母猫の身体に掛け布団の様に布をかけてやってだった。子猫達は彼女の傍にいさせてやった。
子猫達は母猫の周りに集まり母猫と同じく丸くなって寝た、母親を暖める様にして。
母猫は次の日元気になっていた、父親猫もそうでこの日は両方共いた。そして子猫達も全てであった。
店に来ていた、この日も店に来ていた緒形は元気に店の中を歩き回っている彼等を見ながら弓永に笑顔で話した。
「元気になったな」
「はい、夫婦共々」
「子供達も元気だな」
「感染るかと思いましたが」
このことを心配したがというのだ。
「何とかです」
「皆風邪をひかないでか」
「元気ですよ」
「それは何よりだな」
「はい、ですが」
弓永は猫達を見つつ話した。
「猫の家族愛も凄いですね」
「そうだな」
その通りだとだ、緒形も答えた。
「むしろ人間以上にな」
「この子達の家族になって数年ですが」
「それでもか」
「はい、ここまで家族愛が強いとはです」
猫のそれがだ。
「私も思いませんでした」
「俺もだ、人間でも碌でもない親がいるのにな」
育児放棄に児童虐待にとだ、悪質な親も残念ながら世の中にいる。
「立派な家族だな」
「全くですね」
「いい家族だよ」
緒形は猫達を見てしみじみとしていた、両親の周りを子供達が囲んで一緒に店の中を闊歩して他の客達に可愛がられている、そこにある絆は何よりも強いものだった。
母猫と子猫 完
2016・8・19
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ