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飛ぶからこそ
第四章
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「そうした軍人がいることは悪いことかね」
「いえ、それは」
「そう言われますと」
「決して悪くはありません」
「むしろ宣伝にもなります」
「イギリス軍全体の」
「その通りだよ」
 まさにとだ、チャーチルは確かな声で言った。
「騎士道を守った立派な軍人もいる、それ自体がな」
「イギリス軍の宣伝にもな」
「だからですか」
「彼はあのままでいい」
「一般市民には手出しをしない」
「頑固なままでそうあっていていいのですね」
「そうだ、ではこのままだ」 
 まさにというのだ。
「彼には戦ってもらおう」
「騎士として」
「そうしてもらいますか」
「是非な」
 こう言ってだ、チャーチルはウッズはそのままでいいとした。そして実際に彼には何も言わなかった。そしてウッズ自身もだった。
 やはり頑ななまでにだ、部下達に言っていた。
「空を飛ぶ者は皆騎士だ」
「だから騎士道を忘れずに」
「そのうえで」
「戦うべきだ、だからだ」
 それが為にというのだ。
「君達は敵の工場、施設だけを狙うのだ」
「ドイツ軍のですね」
「彼等の」
「そうしてもらう、いいな」
 あくまでこう言ってだった、そうした場所にしか攻撃させなかった。そしてその彼をイギリスは現代の空の騎士として喧伝し自分達のプラス材料にした、だが彼はそのことを知っていても部下に基地でこう言うのだった。
「そんなことはどうでもいい」
「閣下の評判にも影響していますが」
「それでもですか」
「そうだ、私はあくまでだ」
 それこそというのだ。
「騎士として一次大戦以来の空の戦い方を守っているだけだ」
「空の騎士として」
「そのうえで」
「それだけだ、そうした評判はいい」
 一向にというのだ。
「私は私の信念を貫くだけだ」
「軍人、騎士としての」
「空を飛ぶからには守らねばならないことがある」
 そう強く信じているからこそというのだ。
「君達にもそれを守ってもらう」
「では」
「一般市民には何もするな」 
 例えそれが敵国の国民であってもというのだ、彼はこう言い続けていて命令していた。それが空の騎士の守らねばならないと信じているからこそ。
 彼のこの姿勢は大戦中も戦後も変わることがなかった、そして彼を見て多くの者はイギリス軍には騎士道、空においてもそれが生き残っていると賞賛した。イギリス軍もまた一般市民への爆撃を行っていたがそれよりも彼の方が見られ評価された。チャーチルの狙いがそこにあるのならば彼は持ち前の見事な政治手腕を発揮したと言えるだろう。
 しかし当の彼は笑ってこう言った様だ。
「戦争はあらゆるものを使って勝たねばならない」
 その中には一般市民への攻撃も喧伝も含まれる、騎士道を喧伝しても。しかしそれでもウッズはこう言ったらしい
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