第一章
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飛ぶからこそ
第二次世界大戦は当初はドイツ優勢のうちに進みイギリス軍は防戦一方だった。だがアメリカの参戦と彼等の奮戦の結果だ。
戦局は変わりイギリスが優勢になってきていた、それで彼等はドイツ本土への爆撃も行う様になっていた。
その中でだ、イギリス空軍のある基地で司令を務めているジェームス=ウッズ中将は基地の参謀達にこう言っていた。
「爆撃は敵の軍事基地に留めておくことだ」
「住宅街への爆撃は行わない」
「決してですね」
「少なくとも私はしない」
こう参謀達に言うのだった。
「この基地の爆撃隊については」
「一機たりともですね」
「それはさせない」
「敵の軍事工場や軍事基地への爆撃は行っても」
「住宅街にはですか」
「それは絶対に言わない」
誓いでさえあった、ウッズの今の言葉は。面長で皺が深く刻まれた顔は若かりし日は端正で女性にもてたと想像させるものだった。グレーがかった青の目の光は強く銀髪は薄くなっておらず丁寧に後ろに撫でつけられている。イギリス空軍の軍服が長身によく似合っている。
その彼がだ、参謀達に自身の席から言っていた。
「間違ってもな」
「左様ですか」
「それではこの基地ではですね」
「爆撃隊は基地と工場のみ」
「それも軍事の」
「若し民間人の住宅街の上を飛んでもだ」
それでもというのだ。
「照準を合わせてもいけない」
「実際に爆弾を投下せずとも」
「それでも」
「そうだ」
ウッズの言葉は普遍だった。
「これは命令だ」
「閣下の」
「それですか」
「私はそうした場所への攻撃しか命令しない」
強く念を押した。
「断じてな」
「わかりました、では」
「その様に」
参謀達も応えた、そして実際にだった。
ウッズは自身の基地の爆撃隊に軍事基地や軍事工場にしか攻撃命令を出さなかった。爆撃隊のクルー達はランカスターで空に上がってだった。
夜にドイツ本土に向かう様に飛んだ、その時に彼等は話した。
「うちの司令は徹底してるな」
「ああ、絶対に住宅街には攻撃命令を出さないな」
「家には照準も合わせるな」
「そこまで言うんだな」
「アメリカ軍はな」
彼等の同盟国であり共に爆撃を行う彼等はというと。
「平気で住宅街も攻撃してるよな」
「昼に堂々と爆弾落としてるな」
「工場も基地も狙ってな」
「一般市民の家もな」
アメリカ軍はというと。
「うちもそうした部隊あるがな」
「ウッズ司令は絶対に首を縦に振らないな」
「攻撃対象は軍事基地と軍事工場」
「軍事関係だけか」
「騎士みたいだな」
一人がこんなことを言った。
「それだと」
「ああ、騎士な」
「そんな感じだろ」
「あの人一次大戦の時はパイロッ
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