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バーチスティラントの魔導師達
迷い子
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レリーシェの方へ歩み寄った。そして、耳を指差して手招きする。
「耳を貸せ、と。……ふむ」
 短く何かを呟くと、金髪の司書は一回大きく頷いた。
「なるほど。物は試しね」
 少し待っていなさい、と司書はリビングにある本棚へ向かった。少々吟味して一冊の本を取り出すと適当なページを開き、手をかざしながら何事かを呟いた。
 すると、本の上には装飾用とも言える弓矢が出現したのだ。
「……姉さん?」
「おい、まさか矢でもう一回傷を……」
 戦慄する男性陣を睨んで黙らせ、緑髪の少女を見るように目で促す。
「……!」
 すると、少女は先程までの元気をなくし、弓矢の切っ先を見たまま硬直していた。顔は恐ろしく青ざめてしまっている。
「……確定ね。アレンが見た傷は弓矢によるもの。この子は魔導師よ」
 一方の司書はにこっと笑い、即座に弓矢を本に押し込めた。ユイは緑髪の少女に駆け寄り、頭を撫でてやっている。
「なるほどな。トラウマを逆手に取ったのか」
「覚えていなくても感情は働くもの。あそこまで過敏に反応するのであれば、ほぼ間違いないわ」
 ウィルの頷きに、レリーシェも頷く。アレンはそれよりも、ユイの聡明さが気にかかった。
「ねえユイ、よく思いついたね?」
「……」
 少女は無言で、一回頷く。だが、どことなく、目が寂しそうであった。
 少年は何となく察して少女へ問いかけることはせず、戸棚にあったクッキーを緑髪の少女に勧めた。

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