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エターナルユースの妖精王
火竜と猿と牛
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ルカンの額目がけて鋭い一撃。全体重をかけてバルカンの体を後ろによろめかせる。それに合わせて斧が持ち上がるのを確認して、迫る刃を避けるべく額を再度蹴って横に飛んだ。くるりと体を一回転させてひらりと着地したその人――――見知らぬ青年を連れたニアは、蹴り飛ばした間に体勢を整えたナツに一つ頷く。

「いくぞぉ…」

それに頷き返したナツが、右の拳を後ろに引く。拳に炎が纏われ、ニアの蹴りで後方に倒れかけているバルカンに叩き込む。

「火竜の鉄拳!!!!」

がら空きの腹筋に、飛び上がったナツの拳が炸裂する。
倒れかけていたバルカンはそのまま大きく吹っ飛び、一回転して壁に開いた穴の一つに巨体が引っ掛かって止まり、そのままぴくりとも動かなくなった。

「挟まったよ!!」
「あーあ……この猿にマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」
「あ!!そうだった」
「そうなのか?」
「完全に気絶しちゃってるわよ。…てか、何でニアがいるの?」

寒さに滅法弱く、雪山なんて一生縁がないであろう彼を見て首を傾げる。ナツとハッピーにも不思議そうに見つめられながら、一センチほど宙に浮いたままのニアが一つ息を吐いた。

「ロメオって子供に頼まれてな。仕事から帰って来ない父親を探してほしい、と」
「ロメオに?」
「断る理由もないし、事情を知ってて放っておく訳にもいかないし…強いて言うなら寒いのがネックだったが、こっちには優秀な付加魔導士がいるから何とかなったしな」
《い…いいよっしゃああああ!!!!褒められた!!やったね私!!!ニアに優秀って褒められたーってベディに自慢してやるぞ!!いやあ役得、付加魔導士でよかった!!!》
「……この人?」
「……一応魔導士としては一流なんだ、あれでも」

満面の笑みでガッツポーズするマーリンに呆れたような目を向けるニア。その隣で同じように呆れながら「前にランスロットさんとも言ってたけど、ベディって一体…」と疑問が残るルーシィだった。






「…で、肝心のマカオはどこにいるんだ?てっきりお前等が見つけてると思ってたんだが」
「まだ見つかってないの。ニアの方も見つけられてない?」
「巣穴らしいものは片っ端から漁ったが……マーリン、オレ達以外で魔力反応は?」

呼びかけると、歓喜のあまり杖を振り回してくるくる回っていたマーリンがぴたりと止まった。そのまま考え込むように顎に手を添え、目線をふっと上に向ける。深い紫の瞳が虚空を見つめ、先程までの喧しさが一気に鳴りを潜めた。
この場の全員の視線を集めた彼は三秒と経たずに息を吐き、首を数度横に振る。

《私が感知出来る範囲内には君達だけだ。ニアを含めて四、弱っている反応が一つ。……というか、この弱ってるの誰?バルカンだとしたら、それまで感知
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