火竜と猿と牛
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応は―――――。
《どうする、ニア?》
「急ぐぞマーリン。あと魔法の用意頼んだ!!」
嫌な予感がする。あと少しで出遅れになってしまうような気がする。
それはあの時と同じ予感だった。あの時感じた、今動かなければ二度目はないと誰かに囁かれたような感覚。すぐ傍にあるのに掴めるのかが曖昧な何か。
そう言うやすぐに速度を上げたニアの後ろ姿を見上げたマーリンは、何か眩しいものを見るように目を細め、くすりと笑う。
《合点承知。私が行くからには、傷一つ付けさせないとと約束しよう》
唇にそっと人差し指を当て、静かに片目を閉じて。
吹雪に隠れそうな彼を追うべく、マーリンはふわりと体を浮かせた。
「いいか?妖精の尻尾のメンバーは全員仲間だ」
痺れを切らしたような声を発し肩を震わせたバルカンが、四足で向かってくる。低く重い足音が絶え間なく響き、地面を揺らす。
明らかに苛立った顔でバルカンが睨む先にはルーシィ――――ではなく、ナツ。だというのにナツはバルカンに背中を向け、戦うどころか話し始める。向かい合うルーシィが目を見開いても、拳すら握らない。
「じっちゃんもミラも」
「来たわよ!!!」
後ろを指す。けれどナツは振り返らず、腕を緩く開いたまま。
「うぜェ奴だがグレイやエルフマンも」
「解ったわよ!!!解ったから!!!後ろ!!!ナツ!!!」
もう距離はない。今から振り返ったとしても戦えず一方的に殴られるであろう事は、ルーシィにだって想像出来た。そうなってしまってはもう打てる手はないし、それ以前にそんな光景なんて見たくない。
慌てて叫ぶルーシィに対し、ナツは少し声のトーンを変えた。慌ても驚きもしない真剣な顔と声で、大事な事を大事そうに呟く。
「ハッピーもルーシィも、みんな仲間だ」
―――――ほんの一瞬、ルーシィは言葉を失った。
入りたての新人をはっきりと仲間と呼んでくれたのが嬉しかったのか、この状況でそう言い切ったナツの真剣さに見入ってしまったのか、それ以外の理由があるのか。それは定かではなかったけれど。
「だから…」
ナツが振り返る。バルカンが、今にも飛びかかろうと両腕を伸ばす。
「オレはマカオを連れて帰るんだ!!!」
足が地を蹴った。その勢いで体を回転させ、飛びかかるバルカンがナツの頭上を飛び抜けていく一瞬、炎を纏った左足でバルカンの顎を蹴り上げる。
適格に顎を狙った一撃が、バルカンの巨体を容赦なく吹き飛ばす。慌てて体を縮こめたルーシィの左上をバルカンが吹っ飛び、顔から地面に落下した。
「早くマカオの居場所言わねえと黒コゲになるぞ」
着地しながら余裕そうに向けられたナツの言葉に、バルカンが鼻息を荒くする。
怒
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