暁 〜小説投稿サイト〜
エターナルユースの妖精王
火竜と猿と牛
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マカオは嘆くが、ルーシィは目を伏せて妖精の尻尾(フェアリーテイル)の凄さを実感していた。
ルーシィ一人では一匹とすら戦えるか怪しかったバルカンを、十九匹も一人で倒す。そのマカオを、誰が不甲斐ないと言うだろう。誰が情けないと嘲るだろう。
敵わないな、と思った。ルーシィではまだまだ届かない。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士にはなれたけれど、実力ではまだ遠いのだ。

「……ロメオが会いたいのは、父親だろ」

不意に、ニアが呟く。

「アンタがバルカン何匹倒したとか、そういう事じゃなくてさ。……アンタがすべきなのは、そうやってぐじぐじ言う事じゃなくて…今すぐ帰ってロメオを抱きしめてやるとか、父親にしか出来ない事なんじゃないのか?」

口元を緩めてそう言った彼に、マカオは顔半分を隠したまま強く頷いた。







マグノリアの街を夕陽が染める。その一角に、本を読むロメオは座っていた。
小さなその姿に、ナツの肩を借りたマカオが歩み寄る。足音で気づいたのか足元の影が視界に入ったのか、マカオが名前を呼ぶよりも先にふっと顔が上がった。ぽかんとしていた顔が、見る見るうちに笑顔になっていく。
笑って手を上げるナツ、少し後ろで笑顔のルーシィ、跳ねるハッピーと、どこか照れくさそうに頭を掻くマカオ。ニアの姿が見えないのが少し気になったが、広場の入り口の陰からフードが少し覗いているのがちらりと見えた。
――――無事だった。怪我はしているけれど、生きて帰って来てくれた。その嬉しさが溢れるロメオの脳裏を、ある一幕が過ぎる。

―――なーにが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だよ!!!
―――あんなの、酒ばっか飲んでる奴等じゃんか。

違う、と言った。
自分の父親を悪く言われるのが嫌で、許せなくて、悔しくて。

―――魔導士は腰抜けだーい。
―――オレは大きくなったら騎士になろーっと。
―――魔導士は酒臭いもんねー。

そんな風に言われるのが、悔しくて悔しくてたまらなくて。

―――父ちゃん!!!すっごい仕事行って来てよ!!!オレ……このままじゃ悔しいよっ!!!

不思議そうな顔をしながらも、父は頷いた。涙目で訴えた息子の気持ちに応えようと凄い仕事に行って――――それから一週間、帰って来なかった。
あの時ロメオがあんな事を言っていなかったら、父は危険な目に遭わなかった。あちこちに包帯を巻いて、湿布を張って、ボロボロになる事だってなかったのに。

「父ちゃん、ゴメン…オレ…」

自分のせいだと涙を滲ませる息子の前に、ナツから離れ自力で近づく。そのまま片膝をついて目線を合わせたマカオは、小さく震える体をぎゅっと抱きしめた。

「心配かけたな、スマネェ」
「いいんだ…オレは、魔導士の息子だから
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