火竜と猿と牛
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人とかっていないの?そこのマーリンさんとか!!」
《申し訳ないけど、治癒は私の専門外でね。知り合いに傷薬を作る奴がいるにはいるけど、ここじゃあ材料がない。私もモルガンもどうにも出来ないよ》
「そんな…」
困ったように眉を下げたマーリンの言葉の真偽を確かめるようにニアを見ると、彼は少し間を置いてから頷いた。
「……コイツとモルガン以上の魔導士は、オレの傍にいない。コイツ等で無理なら、オレの方に治療手段はない。……残念だが」
それ以上は言わなかった。けれど、その先に続く言葉が想像出来てしまう。
いくら細かい傷を全て処置出来ても、一番深く出血量も多い脇腹をどうにか出来なければ危機的状態なのは変わらない。だが応急セットでは足りず、この場にいる全員が治癒系の魔法を使えず、ルーシィの星霊にもニアの呼ぶ彼等にも治癒能力を持つ者がいない。
――――これはもう、助からない。ルーシィが唇を噛んだ、その時だった。
「っ、おい!!」
ニアの声に顔を上げる。声を上げた彼の姿が視界に入るよりも先に向かいに座るナツが見えて、掲げられたナツの手を見て目を見開いた。
「ちょ…何してんのよっ!!!」
「ぐああああっ!!!!」
止めようと慌てて手を伸ばしたルーシィの言葉が終わるより早く、マカオの絶叫が響く。
掲げた右手に炎を纏ったナツはその手を、炎が包む右手をマカオの脇腹に押し当てる。脇腹から全身に走る痛みに叫ぶマカオが暴れナツの手を離そうと彼の右手首を掴むが、ナツは手を離さない。
「今はこれしかしてやれねえ!!!ガマンしろよ!!!マカオ!!!ルーシィ!!!ニア!!!マカオを押さえろ!!!」
《火傷させて傷口を塞ぐのか。雑だが止血にはなる…ニア、左足を!!!》
冷静に事を分析したマーリンの声でニアが動く。痛みに暴れる左足をニアが、右足をマーリンが押さえ、体重をかけてどうにか落ち着かせる。それを見たルーシィは唯一空いている左腕を両手で押さえ込む。
「死ぬんじゃねえぞ!!!ロメオが待ってんだ!!!」
ナツが叫ぶ。
痛みのせいか、それとも息子の名前に反応したのか―――マカオが大きく跳ね、痛みに悶え、荒い呼吸の中で細く声を出していく。
「ふがっ、あっ、ぐっ……!!……くそ……な…情けねえ…十九匹は……倒し…たん…だ」
「え?」
「うぐぐ…二十匹目に……接収…され……ぐはっ」
「解ったからもう喋んなっ!!!傷口が開くだろ!!!」
――――あのバルカンが、一匹ではなかった。その仕事を、たった一人で受けていた。
「ムカツクぜ…ちくしょオ…これ…じゃ……ロメオに…合わす顔が…ね……くそっ」
「黙れっての!!!殴るぞ!!!」
ナツの腕を掴んでいた右手で顔の半分を覆う。己の不甲斐なさを
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