火竜と猿と牛
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していた一つと合わせて二つになるはずなんだけど?》
顔を見合わせる。マーリンと初対面のナツ達だけでなく、長い付き合いであるはずのニアですら、彼の言いたい事に理解が追い付かない。
どういう事だと全員の頭に事情が入って来るよりも早く、そう誰かが問うよりも早く、その事態は起きた。
「!?」
小さく音がした。その音に真っ先に気づいたナツが音の発生源に目を向け、つられるようにそちらを向く。
視線の先にいるのは、穴にすっぽりと嵌っているバルカン。腕を交差し頭を下にして気絶しているその姿が、どういう訳か淡く光を放っている。
「な…何だ何だ!!?」
光り、全身にヒビのような線が走る。咄嗟にナツが身構え、ニアが右手に力を込め、マーリンが《おや》と気の抜けた声を漏らす。
《そうか…そういう事、だったのか》
その呟きに、何がと返すよりも早く。
一際強い光がバルカンから溢れ――――その巨躯が、一気に縮んでいく。光が止んだ時そこにいたのは、バルカンとは比べ物にならないほど細い、白いコートを着た中年男性だった。体勢は気絶していたバルカンと同じそれで、服はボロボロ、全身に傷を負っている。
人間だ。あの巨大な猿は消え、どう見ても人間がそこにいる。誰だ、とニアが声に出す前に、ナツが叫んだ。
「サルがマカオになった―――っ!!!」
「え!!?」
「誰…え、マカオってコイツか!!?」
驚きつつマーリンを見やる。一足早く事態に気づいた彼は、説明を求めるニアの目を見つめ返してから口を開いた。
《感知していた反応は四つ…そして、最初から解っていた弱い反応は、バルカンの中にいたマカオだった。私が感じていたのはバルカンの魔力反応ではなく、その中で弱っていたマカオのものだった…という訳さ》
「…紛らわしいな」
《私が判断出来るのは魔力反応の有無だけだからね、それが何かまでは解らない。見たところ接収されていたんだろう。バルカンとマカオの反応が別に感知出来ればよかったんだけどねえ》
「接収!!?」
「体を乗っ取る魔法だよ!!!」
ともかく、これで探していたマカオも見つかった。思わず安堵の息を吐き―――まだ気は抜けないのだと、気づく。先ほどまでは危機でも何でもなく、気に留めさえしなかった事が目に飛び込んでくる。
額から血を流したマカオの背後。今も止まずに吹き荒れ続ける吹雪が見える、大きな穴。バルカンの巨体であればその体が栓になっていたそれは、一気に縮んだマカオでは栓など出来ない。
「あ――――――っ!!!」
叫んだナツが駆け出した。それと同時にマカオの体が穴の外に流れるように落ちていく。
そのまま無抵抗に落下していくマカオの足を、自分が落ちる危険すら頭から消えたナツが必死に掴む
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