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SAO−銀ノ月−
第百二十三話
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られたユウキの声や、仮想世界での知り合い一挙に現れたことに脳が追いつかない店員をスルーし、先に店に着いていたらしい直葉に、レコン――慎一が待つ席に揃って座り込む。

「ごめんなさいねぇ、直葉。せっかくレコンと二人きりだったのに」

「いえ! 全っ然! ……ユウキさんは、そこに?」

『うん、いるよー。リーファにレコンも、現実はこんな感じなんだねー』

 ……結局、里香が俺たちをここに連れてきたのは、盛大な顔合わせらしい。直葉や慎一と、VR越しとはいえユウキとの。そしてもう1人、こちらの世界のレインが混乱を収めたらしく、メニュー表を持って近づいてきていた。

「ご注文は……って聞く前に。はじめましての人が多いかな。あたしの名前は、枳殻虹架。ここでバイトしながら、アイドル目指してます!」

「アイドル!?」

 ちょっと、それは聞いてないわよ――なんて言葉が里香から漏れたのもあって、どうやら先にレイン……虹架と知り合っていたメンバーも、アイドルの件は初めて聞いたらしい。

「だって初めて言ったもの」

「ぐぬぬ……」

「目指せ、七色ってところかな〜。こう見えて、街角ステージぐらいはしてるんだから!」

 初めて里香を手玉に取った虹架が上機嫌に腕を組み、俺たちにメニュー表を渡していく。それと同時に他のお客から注文が入り、虹架は忙しそうにそちらに向かっていく。

「あ、はーい! それじゃ、楽しんで行ってね!」

「アイドルか……すごいな……」

「ですね……」

「……里香、どうした?」

 まさかのカミングアウトに語彙が崩壊するメンバーをよそに、当然だが虹架は他のお客の注文を受けに走っていく。その中で唯一、なにやら店の入口が気になっているらしい里香に問いかけると、ごまかしの意味がこもった苦笑いが返ってきた。

「いやー……実は、ルクスにも声をかけたの。グウェンもリアルの方で会えないか、って……やっぱ、来ないわよね。流石に」

「いや、そうでもないみたいだな」

「え?」

 そうして店の入口が開かれる音とともに、虹架のかけ声が店内に響き渡る。新たな客である二人組の少女をこちらの席に呼び込み、特に憮然としているグウェンを無理やり座らせて。後はただ話した、思うさま会話して、喋り通して。

 ――こんな日常がずっと続くのだと、そう錯覚してしまうように。


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