第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
我愛羅
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羅はよく見た悪夢を思い出す。夕日の沈みかけた砂漠で我愛羅は一人の女と立っている。女の抱いた赤ん坊がしきりに泣き声を上げ、風が砂を吹き散らす。
我を愛する阿修羅、我愛羅。自分だけを愛しなさいと、そして自分のためだけに戦いなさいと、そうすれば貴方は存在し続けると、そんな願いをこめてつけたのだと。
我愛羅はよくする癖で、左胸をぎゅっと押さえていた。左手は胸元を押さえたまま、右手をそっと前に向かって伸ばす。夕焼けの中に染まった砂漠は一面オレンジ色だった。
けれど夜叉丸はわかった。彼の姉は我愛羅の身を案じ、愛してこの名をつけたのではないと。我愛羅が存在し続けるようにとその名をつけたのは、この里を恨み、呪いながら死んだ姉の怨念を存在させ、残し、
不意に女の抱える赤ん坊が、砂で出来た自分自身だと気づいた。恐る恐る視線を上げる。風は鳴り止まない。砂が散る。夕日のオレンジが女を染め上げる。
――知らしめるためだと。
砂で出来た女の顔に、「あぁぁっ」と悲鳴をあげて我愛羅はどすんとしりもちをついた。風が砂の母親も、砂の赤ん坊も吹き散らした。砂の小山となり、そしてやがて消えていくそれを見つめながら我愛羅は左胸の猛烈な痛みに泣き声のまじった悲鳴をあげて手を伸ばした。砂は指の間からすり抜けていった。
――アナタは愛されてなど……いなかった――
夜叉丸が中忍以上から使用を許可されるベストを脱いだ。彼の体に一面張り巡らされた起爆札。それが爆発したら夜叉丸はもちろん、砂が守ってくれなければ我愛羅もただではすまない。
――最後です。……死んでください――
それが夜叉丸の、最後の一言だった。
+
それからのことは断片的にしか覚えていない。砂に守られた我愛羅は発狂したのだと思う。夜叉丸との記憶を脳裏から思い出し、握りつぶし、絶叫をあげ、狂ったように泣き叫び、砂が暴れ狂うのを狂気と憎悪と憤怒と慟哭とそのすべてに支配された瞳で見つめていた。淡い青の瞳は絶望と涙の入り混じったものから狂気と怒りと憎悪に満ちたものにかわった。我愛羅は化け物のように吠え、額に「愛」の文字を刻んだ。
自分だけを愛し自分のためだけに戦い存在し続ける阿修羅として、怨念の塊として。今度こそ本当に一人ぼっちになった我愛羅の砂は猛り狂って吹き上げた。
いやに満月の綺麗な夜だった。
+
「どうした? 早く来い! お前の仲間とやらがどうなってもいいのか」
こめかみには血管が浮かび、目は血走る。狂気に見開かれた瞳に、まるで見てはいけないものを見てしまったようにナルトは顔を引いた。
「――っ! サクラちゃん!」
我愛羅の左腕に力が篭る。サクラの苦悶の表情にナルトは焦るが、その体は動き
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