第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
我愛羅
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そうな声でいった。
――貴方を殺すよう……依頼されたのです。貴方の父親……風影さまに――
まさか。
確かに父は自分のことを好いてはいなかった。化け物の自分を好ましく思っていなかった。里の住民を傷つけて殺すばかりの自分に好意を抱いてはいなかった。だけどだからといって、父が自分を殺す?
――とうさま……が――
言葉を形成しきれていない音の数々がぽつぽつと涙と共に落下し、答えを得られないままに消え去った。夜叉丸は殆ど聞き取れない声で続ける。
一尾「守鶴」――砂に伝わるこの尾獣の人柱力は、里の力でもかなり重要なものとなる。しかしそれを持ちながら上手くそれをコントロールできず、逆に仲間を殺してしまう我愛羅は何れ里にとって危険すぎる存在となる――そうなる前に、我愛羅を始末してしまえと。そういうことだったのだと。
父親に暗殺を試みられたことはショックだったが、我愛羅は少しだけ心が軽くなった。
――じゃあ夜叉丸はとうさまの命令で仕方なく……――
風影の命令は絶対。いくら彼の義理の弟たる夜叉丸でも逆らえないし、夜叉丸はきっと砂が我愛羅を守ってくれていることをわかっていながら殺しに来たのだと。それならいいやと我愛羅は思った。夜叉丸のことを嫌いにはならないし、夜叉丸を恨むこともしないだろう。これからも仲良く一緒にいられるし、一度暗殺に失敗した夜叉丸を風影は諦めるはずだと、そう思った。
――いいえ。それは、違います――
気温差の大きい砂漠。冷たい夜の中、夜叉丸のその一言はまるで脊椎を氷と入れ替えられたかのような衝撃を我愛羅に齎した。
――確かに、風影さまの命は受けていました……でも、断ろうと思えば断っていたはず――
目の前から光量が落ちる。ただでさえ薄暗い夜は暗い闇に塗りつぶされる。
があらさま。
意味をなさない音が鼓膜を揺らす。
風が止んだ。まるで我愛羅に夜叉丸のその言葉を我愛羅の耳に焼き付けようとするように。
――心の底で、私はきっと、貴方を――
――ウランデイタ――
大好きだった姉の命を奪って産み落とされた我愛羅を姉の忘れ形見と思い、彼を心の底から全力を以って愛そうと夜叉丸は必死だった。テマリよりもカンクロウよりもずっと手塩をかけて可愛がり、愛し、育てた。けれど出来なかった――姉は我愛羅を産むことを望んではいなかったのかもしれない、夜叉丸は次第にそう思い始めた。里の犠牲になって死に、里を呪いながら死んだ。
――その時から、私は……一生治らない、心の傷を負っていたのでしょう――
我愛羅の手が左胸を掴む。激痛を訴えてくる左胸は、いくつものナイフを突き立てられてズタズタにされたかのように、痛い。
我愛羅。その名をつけたのは我愛羅の母親だった。
夜叉丸の話を聞いている内に、我愛
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