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ソードアート・オンライン もう一人の主人公の物語
■■SAO編 主人公:マルバ■■
二人は出会い、そして◆蘇生
第十九話 アイデンティティ
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こをしているようなものなのに。」
マルバはシリカの尊敬の眼差しを避けるように顔を背けた。
「そんなこと、ないよ。すごくなんてない、ぜんぜん、これっぽっちも。」

その場に少しの沈黙が訪れた。しばらくして、マルバがぽつりと話し始めた。
「僕は君に会った日、この子は一体なんのために戦ってるんだろう、って思った。安全を十分に取って、攻略に関係ない、なんの意味もない戦いをする意味ってなんなんだろう、なんで安全な宿屋ではなく危険なフィールドにいるんだろうってね。どこまでも強くあろうとする最前線の仲間たちの中にいたせいで大切な感情を忘れてたんだろうな。今なら分かるよ、君はこの世界で生きるために戦っている。自分が自分でいるために。」

シリカは首を振った。
「……そんな大層な理由なんてないです。わたしはただ、宿屋に閉じこもっているのはあたしらしくないって思っただけです。本当にいつまでも安全かどうか分からない宿屋に無力なままでいるのが怖かっただけです。マルバさんみたいに他の人を開放しようなんて理由じゃないんです。ただ、自分だけのために戦ってるだけなんです。」
「僕こそ、そんな大層な理由で戦ってるわけじゃない。僕はただ、……自分が生きた証が欲しかっただけなんだ。攻略組として戦ってれば、例えモンスターに負けて死んでも、この世界の開放に向けて戦った英雄の一人になれるでしょ?そうすれば僕が生きた意味があったことになる。僕はそれが欲しいんだ。ここに来る前の僕は本当に凡人で、誰でも僕の代わりになれるような、生きることになんの意味もない人間だった。こんな世界になったからこそ、僕は生きる意味のある人間として生きることができる。正直嬉しかったよ、ここがこんな世界になってしまったことが。たくさんの人が死ぬことになったっていうのに。……僕は、最低な人間だ。他の人のことなんて考えちゃいない。」

シリカは顔を上げて、マルバのうなだれた姿を見た。
「……マルバさんもあたしと同じだったんですね。」
「違う。……僕を助けたいって言ったあの時の君の目、かなり真剣だったよ。君は僕と一緒に戦おうとしてくれた。僕や、ピナを守るために。君は僕とは違う。どこまでも利己的な僕なんかとはぜんぜん違う。」
「マルバさんだって、わたしを守ってくれたじゃないですか。マルバさんがいなかったらわたしはあの森で死んでいました。命の恩人ってやつです。」
「…………」
「妹さんのことを聞いたとき、わたしはマルバさんのお役に立てて嬉しかったですよ。マルバさんはあたしを助けられて嬉しくなかったんですか?」
「……嬉しかった、よ。……当たり前じゃないか。」
「じゃあ、顔を上げてください。マルバさんがそんなふうにしているのを見ると悲しくなっちゃいます。誰かの役に立てた、嬉しかった、それでいいじゃないですか。
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