マイ「艦これ」(短編)「トモダチっぽい・前編」改1.6
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がゲームでしょ?」
兄は腕を組んで苦笑する。
「だいたい可愛い萌えキャラが轟沈するって、衝撃的じゃないか?」
「別にぃ」
私は、そのままスマホの画面を閉じた。
「アケミは、お兄ちゃんと違ってゲームも強くないし。どうせ艦娘だって同じのが何度も出てくるんでしょ?」
「えぇ? そりゃまあ、そうだけど……」
「だったら別に良いじゃん」
これは「艦これ」というゲームだ。
私も最初は面白がってプレイしていたが最近は部活もあるし、ご無沙汰だった。
私は今年、中学に入ったばかり。運動部にも入った。部活は小学生のときから続けていたスポーツの延長で入部する人も少なくない。
でも逆に中学から入った部で新しい競技を始める人だって居る。
私は後者だった。何となく惹かれるようにして剣道部に入った。
今、季節は6月。まだ梅雨は明けていないが学校ではそろそろ新人戦の時期になる。運動部を中心とした各クラブでは、それぞれ先輩を中心にレギュラー陣に緊張感が漂い始めている。
私と同じ一年生でも小学生の頃から剣道を続けていた人はいきなりレギュラーに選ばれたりする。でも私のように中学に入ってから始めたような人は、まだ試合に出る機会は無いだろう。
試合とは程遠い一年生は、今ひとつ煮え切らない状態で悶々としている時期だ。そんな事情もあってか今日の私は晩ごはんの後、兄に言われて久しぶりに「艦これ」をやっていたのだ。
基本的に憂さ晴らしが出来るゲームは嫌いではない。でもシューティング系は苦手なので、適当にまったりとプレイ出来る艦これは好きな方だ。
そういえばプレイし始めたばかりの頃は、しょっちゅう艦娘を沈めていたような気がする。ある程度、回数を重ねると艦娘も強くなるし闇雲に轟沈することも少なくなった。
ただ今日は久しぶりだったから、ついうっかり夜戦に突入したのだ。そして夕立の轟沈……萌えキャラ好きな兄には衝撃だったとしても、私にとっては、この艦娘だって、しょせんはデータに過ぎない。
「やれやれ」
私は立ち上がると仏壇に近寄って線香を手向けた。それは一番上の姉のものだ。
私は手を合わせた後、振り返って言った
「兄ちゃんも手を合わせなよ。守ってくれるかもよ」
「……」
兄は苦笑したが近寄ると仏壇に手を合わせた。
私には姉が居たらしい。でも私は彼女のことは全然知らない。私が生まれる前……そう、兄がまだ小さい頃、事故か病気で死んだ。それがショックだったのか兄は引きこもりがちになってしまった。
両親も姉のことはあまり触れたがらない。その気持ちは私だって分かる。ゲームの夕立が沈んでも何とも思わないのは、こういった背景があるからなのだろうか?
我が家を薄っすらと覆う陰みたい
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