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世界に一つだけの花
第一章
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                 世界に一つだけの花
 ペリリュー島の人達は開戦と聞いてだ、まずは笑顔で言い合った。
「遂にこの時が来たな」
「ああ、立ち上がってくれたんだ」
「亜米利加には随分追い詰められていたけれど」
「日本の人達も遂にだな」
「戦争をはじめてくれたか」
「皆、見ているんだ」
 ペリリュー島の人達に日本軍の若山富太中尉が言った、陸軍士官学校を出た英気溢れる顔立ちの青年将校だ。
「我々は必ず米英にも支那にも勝ってだ」
「亜細亜に八紘一宇をもたらすんですね」
「そして太平洋に」
「そうだ、この戦争は義の戦争だ」
 若山は彼等につう良い声で語った。
「君達もその中にいるからな」
「我々は何ていうかですね」
「ずっと支配されてきてです」
「それが普通だって思ってましたけれど」
「これからはですか」
「これまでもそうだったが不十分だったかも知れない」
 ここでだ、若山は島の人達に申し訳なさそうにこうも言った。
「君達を臣民として遇することに」
「いえいえ、全然違いましたよ」
「皆さんよくしてくれてますよ」
「若山さんにも司令にも」
「勿論他の方々にも」
「だといいが、しかしこの戦争が終わった時にはだ」
 日本が勝ってとだ、若山は彼等にさらに話した。
「君達は帝国臣民としてだ」
「八紘一宇の中にいてですね」
「そして誰もが平等に暮らせる」
「そうなるんですね」
「そうだ、大東亜共栄圏に差別はない」
 若山は強い声で目を輝かせて語った。
「だから君達もだ」
「はい、差別のないですね」
「幸せな世界で生きられますね」
「これからは」
「白人優位の世界が変わる」 
 若山はさらに言った。
「その戦争になるんだ」
「はい、しかし」 
 ここでだ、島の人のうちの若い青年が若山に問うた。
「私達は行かなくていいんですか?戦いに」
「そうだよな、俺達も臣民なのに」
「折角戦争がはじまったのに」
「行かなくていいのか?」
「この戦争に」
「君達には徴兵も募兵もされていない」
 若山はいぶかしんだ島の人達に確かな声で告げた。
「だからだ」
「いいんですか」
「戦争に兵隊として行かなくて」
「そうしなくても」
「やがてこの島にも選挙権が与えられるだろう」
 若山は彼等にまずこのことから話した。
「そして徴兵の話も来る」
「それからですか」
「それで、我々も戦争に行く」
「行ける様になるんですね」
「残念だがこの戦争の後になる、しかし君達は紛れもなく臣民であり我々と同じだ」
 このことはだ、若山は確かだと話した。
「台湾、半島の同胞達と同じだ」
「そうですか、じゃあ」
「戦争が終わればですね」
「その時は」
「君達も軍に入られて戦える様になる
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