アインクラッド編
ボス線への誘い
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とけよ。さっきの様子じゃ予備のコート持ってないんだろ。ここから街まで誰とも遭遇せずに帰る気か?」
ぴたりと少女の動きが止まる。そんなことが不可能だって事ぐらい誰にでも分かる。
「でも、このコートを借りたら君の装備が・・・・」
申し訳なさいっぱいというご様子だ。
確かにコートの下はTシャツと小さな金属の胸当てをしているだけだ。もともと低い防御力がこれでは紙切れ同然だ。
「俺も一旦街に戻るから気にするな。それにそんな青ざめた表情の奴を放っておいたら、気になって戦闘にも集中できない」
アスカは刃こぼれしている細剣を鞘に収めながら言う。
予備を含めて3本購入していた剣も最後の一本の耐久値がなくなりそうなところまできている。どうせ明日には帰ることになっていただろうから、さして問題ない。
「ゴメン・・・。本当に助かったから・・・ありがとう・・・」
アスカの目の前で少女は大仰に謝る。アスカのことを助けたから女性であることがばれてしまったのに、そんなことを欠片も気にしていないような感じだ。
むしろアスカに罪悪感が芽生えてしまう。コートを貸したのも命を助けようとしてくれた事との貸し借りをチャラにしたかっただけなのだから。
「だから、いいって言ってるだろ。それより帰るなら早く帰るぞ。日が暮れないうちに帰りたい」
現在、ちょうど昼の12時ぐらいだ。暗くなる前に帰るには余裕の時間だが、余裕を持って行動するべきだ。
暗くなってくると強力な夜行性のモンスターが出てくるが、それを防御力が紙切れ同然の状態の今は相手にしたくない。
別にアスカは死にたがりではない。全力で戦った末に死ぬことは受け入れているというだけだ。万全ではない状態で無茶な戦闘はしない。
その少女もダンジョンの最奥にやってくるだけの実力と知識はあるので、アスカの言わんとすることは理解できる。
こくんと頷いた少女と共にアスカはダンジョンの出口に向けて歩み始めた。
ちょうど1時間半で2人は何事もなく無事に街に着いた。
単身,迷宮区にいたことからそれなりに強いであろうことは予想していたが,それ以上の強さを見せつけた少女のおかげで,アスカは特に苦戦することもなかった。
しかし、アスカはパーティーを組んだこともなければ2人以上でコンビを組んで戦闘を行ったことすらなかった。
少女の「スイッチ!!」という言葉の意味が分からなかったため、不用意な硬直時間を作ってしまった少女が攻撃をもろにくらってしまうことが一度だけあった。
そのあと、〈スイッチ〉という言葉の意味を聞いたアスカに少女は驚いたような視線をぶつけた。そんなことすら知らないでダンジョンにいることが信じられないらしい。
スイッチ――故意にブレイクポイントを作り、他のプレイヤーと入れ替わる戦法―
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