第7章 聖戦
第160話 崇拝される者
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たのかが類推出来る感情が発せられた。
一人目の湖の乙女からは懐かしさと、そして納得と言う感覚。
二人目のタバサからは……微妙な感覚。何かを、記憶の深い部分から何かを思い出そうとしている事がありありと分かる気配。
そして最後の一人は……。
「これは――」
少し寄り目にしながらマジマジとその指輪を見つめる崇拝される者ブリギッド。何かを必死に思い出そうとする人間特有の気を放つ彼女。
ブリギッドが彼女なら、この指輪は二人の絆を示す貴重なアイテム。この指輪を見せる事に因り、今まで思い出さなかった何かを思い出す切っ掛けになる可能性は高い。そして逆に言えば、これを見せても何の反応も示さなければ、彼女は地球世界のあの娘でない可能性の方が高くなる。
その時、蛍光灯の明かりを受け指先に存在する小さな宝石が紅い光を放つ。
それは本当に小さな輝き。俺の鼓動が産み出した偶然の出来事。
その瞬間、それまでとは違う色が彼女の黒い瞳に浮かんだ。そして、それと同時に強く発する感情。
郷愁、追憶の情、ノスタルジー。遠く過ぎ去って仕舞った数々の想い出たち。
様々な感情の渦。言葉に成らない言葉。傍にいるだけで、……彼女が発して居る気配を強く感じるだけで、何故か目頭が熱くなってくる強い思い。
しかし――
しかし、その中には矢張り、負に類する感情は存在しない。
「これは彼奴にあげた火避けの指輪!」
ようやく思い出したか、この頓痴気め。
……と、心の中でのみ罵ってみる俺。……なのだが、おそらくこれは的外れ。現実的に言えば、相馬さつきに取って武神忍と言う存在は、長門有希に取っての、弓月桜に取っての俺よりも軽い存在だった、……と言うだけの事。
ただそれでも、一度の人生で関わるだけで終わるほど小さい存在でもなかった。そう言う事だと思う。
「この指輪を持っていたと言う事は、オマエは――」
火避けの指輪。俺の異世界同位体が相馬さつきより貰い受け、そのまま長門有希に装備。その後、羅?星の黒き炎を完全に無効化する事に成功。
この事により、羅?星に一瞬の隙を作らせ、奴の封印に成功する。
これが今、俺の指先に存在する指輪。俺と相馬さつきの絆を示す呪的なアイテム。
炎の精霊王である崇拝される者ブリギッドの感情が高ぶる事により、周囲の小さな精霊……。主に炎の精霊たちが活性化。その結果、高緯度地域の冬に相応しい冷気に染まっていたはずの大気が、今では春の装いを纏う。
気合いを入れ直すには少しヌル過ぎる気もするが……。
少し心の中だけでの苦笑。但し、表情に関しては厳しい物のまま。
「さつき、頼みがある」
大きく息を吸い込み、体内を巡
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