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LORD OF SPEED
第一章
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                    LORD OF SPEED
 俺は目指す。あの速さを。
 レースの場でだ。俺はいつもチームのメンバーに言っていた。
「とにかく何時でもな」
「ああ、トップだな」
「それを目指すんだな」
「誰よりも速くなりたいんだよ」
 トップ、しかも只のトップじゃなかった。
 誰も前にいない、その頂点の中の頂点を走りたかった。だからだ。
 F1レーサーになった今もその前もだ。俺はただそう考えていた。
 それでだ。俺はトレーニングの間も言っていた。
「身体もな」
「そのトップを走る為にか」
「そこまで鍛えてるんだな」
「速くなる為にはな」
 その為だった。何もかもが。
「俺は何だってするからな」
「レースでトップか」
「誰も前には走らせないか」
「俺の前を走る奴は誰もいないさ」
 この自信もあった。実際に。
「俺は風を抜くぜ。ライバルは風だ」
「他のどのレーサーでもない」
「そうも言うか」
「ああ、俺のライバルは人間じゃない」
 他の誰にも負ける気がしなかった。それ故の言葉だ。
「風だからな」
「じゃあ風を抜いてか」
「ずっとトップになるんだな」
「そうさ。俺はやるからな」
 トレーニングの時もだ。俺は走っていた。
 目の前には誰もいない。グラウンドにあるのは。
 風だ。その向かい風を浴びながら俺は言う。
「この風を抜いてトップになってやるさ、ずっとな」
「なら俺達も協力するからな」
「そうさせてもらうな」
「だからいいな」
「やらせてもらうからな」
「悪いな」
 誰もが俺を支えてくれる。このことも有り難かった。
 とにかく俺は鍛え風を見ていた。特にレースの時は。
 俺は前に誰もいない。道にそして。
 風だ。見えない筈のその風を見ていた。
 俺はこの風を抜く。そう思った。
 しかしその時後ろから別の風が来た。
「!?」
 赤いマシンだった。それが俺の青く、風をイメージしてカラーリングしていたそのマシンを抜き去った。そうして。
 そのまま駆けていった。俺の前を。
 俺はその後で表彰台にいた。しかしいつもの場所ではなかった。
 二番目の台に座っていた。そこからクールな顔でインタヴューを受けているそいつを見た。自分でも唖然としているのがわかる。
 その表彰式の後でだ。俺はスタッフに聞いた。
「あいつ何だ?赤いマシンの奴は」
「いや、知らない」
「俺もだ」
「俺もだよ」
 スタッフは全員呆然として俺に返してくる。
「全然ノーマークだったよ」
「ルーキーらしいがな」
「とんでもない速さだったな」
「j本当に誰なんだ
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