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KANON 終わらない悪夢
13香里VS栞
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ったんで、病気の後遺症じゃないかって、カウンセリングも受けたりしたんですが……」
 人は死ぬような思いをした場合、PTSDと呼ばれる心理的な傷に悩まされ、そのトリガーが引かれた時、恐ろしく攻撃的になる場合がある。
「そうでしたか、俺が香里にばかり気を使って、栞さんを放っておいたんでこうなったみたいです。昨日だって、電話の後は栞さんに会いに行くつもりだったのに、すみません」
 しかし、このように限度を超えた争いになったのは、舞が言っていた「タクシーに乗って出て行った魔物」が、栞の命を繋ぐために、天使の人形の力で憑依させられたからで、昨日もおかしな目付きになった後、自分と同じ事を姉にもするよう言わせたのも、この魔物だった。
「いえ、相沢さんは悪くありません、謝らないで下さい。でも最近は香里の方もこうなってしまって、とても女同士とは思えない喧嘩をするようになったんです」
 それも香里に取り憑いた1体の仕業で、「祐一に残っていた魔物の気配」とは、時折出てくる香里の中の魔物の残り香だった。
「それも、俺が原因ですよね?」
 魔物が全力で逆らえば、常人の母親が適うはずもないが、相手が親なので支配が衰えたのかも知れない。しかし、祐一が欲しくて独占したいのは、魔物も同じらしい。
「いえ、相沢さんの話をしている間だけは仲良くしていて、ドラマを見ているのにニュースにチャンネルを変えたとか、そんな下らない事で大喧嘩してたんです」
 そして両親に、「祐一と愛し合えば治る」などと言う、荒唐無稽な話を信じさせたのは、天使の人形が使った暗示で、普通なら世間体を気にして、例え娘が命を落とそうと、父親がそんな恥ずかしい真似を許すはずが無かった。

「親指を手の中に握って、力を入れたり緩めたりして下さい」
「はい」
 二人が話している間、採血されている香里。しかし香里は、その最中呼吸を止めたりして、可能な限り悪い結果が出るよう、努力するのは忘れていなかった。
「大丈夫か? 手を握ってた方がいいか?」
 表情が元に戻り、「オラオラ香里ちゃん」から普通の香里になっていたので、思わず声を掛ける祐一。
「い、いいの、注射だから危ないでしょ」
 もちろん、祐一に手を握られると、他から電源を供給されているように、正常値が出てしまいそうで断った。
「はい、力を抜いていいですよ」
 香里の名前が書かれたプラスチックの採血管にサンプルが採られると、「至急」の文字が書き加えられ、器材の乗った台車に置かれた。
「1時間程で結果が出ると思いますので、またお呼びします」
「「はい」」
(俺でだめだったら、名雪呼ぼうか)
 秋子の言葉を思い出し、安易に名雪に頼ろうとする祐一。従兄妹の少女がどんな気持ちで家にいるかも知らずに。
「じゃあ、時間があるから、早いけど昼にしようか、
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