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停留所の看板で、次が病院前だと確認する北川。
『次は市民…』
車内のアナウンスが終るのも待てず、発車するとすぐに停車ボタンを押す祐一。
「降りるぞ」
「あ? ああ」
男二人は発車したばかりのバスの中で、早くも降車口に向かって歩いて行く。
『バスが走っている間の座席の移動は、危険ですのでご遠慮下さい』
もちろん、そんなアナウンスなど無視して、降車口に並ぶ三人、祐一はすでに支払いを済ませ、階段を一段降りていた。
(相沢、香里は一体どうなったんだ?)
答えてもらえない疑問を、心の中で繰り返す北川。
(たぶん病院でも教えて貰えないんだろうな)
『市民病院前、市民病院前です』
扉が開くのと同時に飛び出した祐一に続き、二人も料金を払い、すぐに降りて来た。
「どっちだ?」
「こっちだ」
以前病院に来た覚えのある北川は、小走りに走り出した。しかし、その横を名雪が走って追い抜いて行く。
「待てよっ、名雪」
二人の心情を思って急いだつもりだったが、名雪の気持ちは遥かに急いでいた。
(水瀬さん)
一直線に入り口までの坂道を駆け上って行く名雪、陸上部部長の全力疾走なので、男二人も置いて行かれる程だった。
「名雪っ」
入り口の自動ドアが開く間ももどかしく、ガラスの間をすり抜けて入る名雪。
「待てったら」
止める声も聞こえないのか、受け付けまで走り切り、香里の居場所を聞いていた。
「あのっ、香里、美坂香里はどこですか?」
ようやく追い付いた二人も、受付が香里を探すのを待つ。
「1時間前、救急車で来たはずですけど」
「え〜、その方なら、北館306号室です」
名雪は聞き終わる前に走り出し、エレベーターにも乗らず、階段を駆け上ろうとした。
「走るなっ、そのまま駆け込むつもりかっ」
「えっ?」
例え本人が気付いていたとしても、知らぬ振りをしておくのが人情、祐一の声は何とか名雪を止めた。
「うん」
ようやく止まった名雪も、息を整えながら階段を上って行く。
「会っても泣くんじゃないぞ」
「うん」
注意しても涙は止められないが、一応は言ってみる。
(香里の妹って、確か凄い病気だったはずだな?)
二人の態度で何かを感じた北川も、ゆっくりと階段を上る。
(どうする? 告白でもして、相沢みたいになってみるか?)
自分にはそんな力が無いのと、香里のそっけない態度からも、その望みは無かった。
(無理だな)
やがて、病室に着いた3人は我が目を疑った。そこには全く血の気を失い、当時の栞よりも肌が白い香里の姿があった。
「あら、早かったのね、授業抜け出して来たの?」
本人はベッドに座って平然としていたが、その顔色を見て、誰も「大丈夫?」などと声を掛けられずにいた。
「え、ああ」
「
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