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のかしら」
まだ姉妹で二人っきりの時は、お互い微妙な溝があったが、そこに祐一が加わると、いつもの調子に戻れた香里、内心は感謝しているのかも知れない。
「でも名雪さん、どうするんですか? 遅刻しちゃいますね」
「秋子さんにまかせて来た、あいつと一緒なら毎朝ランニングだし、春になってからは盲導犬の気持ちがよく分かった」
「うふふっ、じゃあ私も学校まで連れて行って下さいっ」
そう言うと目を閉じて、祐一に体を預ける栞。
「あ、ああ」
腕を組んだ上、肩に頭を乗せ、もうベタベタの二人。
「うわっ、よく恥ずかしく無いわね、私…… 先に行ってるわよっ」
気を使ったと言うより、よくある表現で、「他人だからね」と言いそうになり、慌てて足早に歩き出す香里。
「待てよ、お前はこっちだ」
「えっ?」
捕まえて手を取り、栞の空いている手を握らせてやる。
「な、何するのよっ、貴方の家はどうか知らないけど、うちはこんなベタベタしたりしないのよっ」
体育会系の水瀬家ではスキンシップが多かったが、文化系の美坂家では、普段こんな触れ合いは無かった。
「嫌? お姉ちゃん」
手を離そうとしたが、妹に握り返され、振りほどくような酷い真似はできなかった。
「もうっ、いつまでも子供なんだからっ」
暖かい日差しの中、二人と手を繋いで通学路を歩いて行く。たったそれだけの事が、今まで見たどんなドラマより涙を誘った。
「祐一さん、ありがとうございます、グスッ、また一つ、夢が叶いました」
両手が塞がっているので、流れる涙を拭おうともせず、歩き続ける栞。
「何泣いてるのよ、まるで私がいじめたみたいじゃない」
うっすらと涙を浮かべながら、顔を背ける香里。
「ああそうだ、お前が悪いんだ。病気の妹が心配で心配で、いなかった事にしないと耐えられなかった大馬鹿者だ、これからは大事にしてやれよ」
「えっ?」
以前、無視されていた理由を教えられ、今まで抱えていた不安が、雪解けのように消えて行った。
「な、何言ってるのよっ」
「お姉ちゃんっ!」
否定しようとした香里に抱き付いて、肩に顔を埋めて泣き始める栞。
「うっ、ううっ」
「馬鹿ね… こんな所で抱き合って泣いてたら、変に、思われる、じゃない、やめ……」
妹に抱きすくめられ、次第に涙に詰まり、拒絶の言葉は続かなかった。
「私だって、私だって辛かったんだからっ」
虚勢を張るのに疲れたのか、香里も栞の背中に手を回し、力一杯抱き締めていた。
「お姉ちゃんっ、お姉ちゃんっ!」
「栞っ!」
(良かったな、二人とも)
しかし、そこは朝の通学路、色々な方向から集まった生徒達が歩いていたが、異様な光景を見て立ち止まり、渋滞が起こり出した。
『ねえ、あの二人って』
『美坂さんと相沢さんよ、
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