第三十九話 認識その五
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「それでかよ」
「俺達には偉そうにしてるのか」
「殴ったり蹴ったり罵ってな」
「セクハラもしてな」
「この前一年の娘の尻触ったらしいぜ」
「それ犯罪だろ」
立派なセクハラ行為である、一般の企業ならばこれだけで社会生命が終わる。
「何で誰も訴えないんだよ」
「生徒は泣き寝入りかよ」
「やられ放題でな」
「俺達はゴミか」
「あいつ等から見ればそうかよ」
衝夫の悪質な知性の欠片も感じられないジョークに笑う教師達を見て言う。
「だからあいつと付き合えるのかよ」
「結局学校の先生ってそうなんだな」
「変な奴と付き合えるのって変な奴だけっていうし」
「変な奴だからあんなのと付き合えて」
「あんな下品な冗談に笑えるんだな」
「あんなの何処が笑えるんだ」
衝夫のジョークについても言う。
そして衝夫についてだ、忌々しげに言うのだった。
「早くいなくなれ、あんな奴」
「偉そうに校内歩きやがって」
「俺達が挨拶してもな」
一人の生徒が衝夫の歩き方の真似をした、職員室の死角で。それは胸をふんぞり返らせて肩を大きくゆすって歩くヤクザかゴロツキの歩き方だった。
「その前をこうして歩いてだよな」
「ウッス、なんだよな」
「こんな挨拶あるかよ」
「生徒はガタガタ震えて頭下げてな」
「その前通ってこれかよ」
「どんだけ偉いってんだ」
「何様のつもりだよ」
その態度に生徒をどう見ているかが出ていた。
「挨拶しないと怒るしな」
「それだけで殴ったりな」
「後輩が挨拶忘れたら先輩を殴ったりしてな」
「じゃあ挨拶してもらえる存在になれ」
「俺達だって嫌々挨拶してるんだよ」
教師でありそして暴力と恐怖で生徒を従えさせているからだ。
「自衛官の人だったら絶対に返礼してるぞ」
「相手の階級が下でもな」
ただ自衛官にもやはり相当おかしな、何故か十年は士長をやっている様な人間がそうである場合が多い様だがそれをしない者もいる。ただしこうした輩は僅かだ。
「それが常識だろ」
「軽く頭を下げるだろ、こっちも」
「頭を下げられたらな」
「それが胸張って前通ってウッス、かよ」
「応援団の団長かよ」
「神様だっていうのか」
応援団は究極の上下社会だ、大学では四回生の団長や幹部は神で一回生はそれこそ塵芥の様なものだ。
「どんだけ偉いんだ」
「脳味噌筋肉の癖にな」
「自衛隊の悪口もやたら言うし」
「御前より自衛官の人達の方がよっぽど立派だよ」
実に忌々しげにだ、彼等は衝夫のことを話していた。
それは女子生徒達も同じだ、むしろセクハラをされる危険があるだけに男子生徒達よりもさらに衝夫を忌み嫌っていた。
だからだ、体育の授業の時にグラウンドで衝夫の姿を見て顔を顰めさせていた。
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