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真田十勇士
巻ノ七十四 最後の花見その七

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「まさにな」
「だからこそですな」
「あくまで豊臣家を盛り立てられ」
「そのうえでお拾様にも」
「そうなりますな」
「うむ」
 その通りだというのだ、尚本名を言うのは諱でありはばかれるので十勇士達も秀頼と呼ぶことは止めた。彼等の中だけでのことであっても。
「あの方はな、しかしな」
「それでもですか」
「それがかえってですか」
「厄介なことになりますか」
「治部殿は己を曲げられぬ」
 とかく一本気な男だ、自分が正しいと思えばその道を進み尚且つ何時どんな場所でも正しいと思ったことは誰が相手でも言う。
 その石田の気質も知っているからこそだ、幸村も言うのだ。
「それがかえってご自身の立場を悪くし」
「そして、ですか」
「豊臣家を盛り立てようとする余り」
「そして豊臣家の天下を守ろうとされるあまり」
「かえって、ですか」
「ご自身の立場を悪くされますか」
「女御衆も治部殿や刑部殿なら無闇に言えぬが」
 彼等にはというのだ。
「まだな、しかしな」
「そうした方々もおられなくなると」
「大納言様もおられませぬし」
「女御衆も止められず」
「また政の出来る方々も」
「精々六十万石を治められる程か」
 石田や大谷達がいなくなった場合の豊臣家はというのだ。
「今はまだ二百万石を支えられるが」
「それでもですか」
「あの方々がおられなくなると」
「その時こそ豊臣家は危ういですか」
「そうなりますか」
「おそらく内府殿は天下人になられてもな」
 幸村は家康の性格も見て言う、律儀であり人の血は極力出さない様に常に務める彼ならばというのである。この辺りやるとなれば一気に行う信長とは違う。ただし信長も彼の敵以外の者や悪辣な者以外は絶対に殺さなかった。
「お拾様にはな」
「無体はされませぬな」
「仮にも太閤様のご子息ですし」
「北政所様とも懇意ですし」
 秀吉は秀頼に北政所にも敬意を払い母と思えと常に言っている。言うならばもう一人の母親である。
「そうなりますな」
「国持大名ですな」
「そして官位も高く」
「大坂から出られても」
「大名としても位の高い扱いですな」
「そうなる、国持大名で右大臣位にはな」 
 幸村は朝廷の官位の話もした。
「なられるであろう、婚姻の話もあるしな」
「内府殿のですな」
「嫡男であられる竹千代殿の姫君」
「確か千姫といわれましたな」
「あの方とお拾様のご婚姻ですな」
「そのお話も出ていますな」
「だからな」
 それでというのだ。
「内府殿もお拾様を無下にはせぬし出来ぬ」
「だからですか」
「若し徳川家の天下になろうとも」
「天下は泰平であり」
「豊臣家も残りますな」
「どうも豊臣家はな」
 この家のことも話す幸村だった。
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